ヨウ

ヒストリー・オブ・バイオレンスのヨウのレビュー・感想・評価

4.0
とにかくハラハラしっぱなしだった。徐々に生じ始める不協和音に、次々と訪れる望まぬ来訪者。
少しずつ崩れ始めていく日常に、緊張感がドンドン張り詰めていく。

「影おばけは光が嫌いさ、明るい所には出てこない」

「(車を修理しながら)動いたさ、一瞬だけな」

「10代のうちに、貴方と出逢いたかったわ。」

「人は変われるさ、あっという間に」

劇中の何て事のない日常会話の端々に、やがて訪れる展開が暗示されるかの様に潜んでいるのが分かる。

見えない何かに絡め取られていく様に、無縁だった「暴力」が登場人物たちの心を捕らえ始め、家庭生活が徐々に侵されていき、その最中に垣間見せるトムの静謐と狂気の揺れ動く様相…

何処に帰結していくのか想像もつかずに物語は闇に引き込まれる様に進んでいく。

殺し屋が待ち構えるギャングハウスに入るよりも、終盤、家族がいる食卓に戻る際の方が緊張を強いられるというのは、この映画の何よりも特筆すべき点だと思った。
あの後、妻が何という言葉を発するか、想像の余地を残した終わり方がとても秀逸だった。
ヨウ

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