天豆てんまめ

アイズ ワイド シャットの天豆てんまめのレビュー・感想・評価

アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)
4.0
1999年鑑賞済未レビュー作品③

なぜ、キューブリックは「この作品は自分の最高傑作だ」と言ったのだろうか、、その答えは未だに見えない。1999年3月7日に逝去したスタンリー・キューブリック監督が、死の直前まで編集し続けてようやく完成にこぎつけた。そう思うと、全編に死の影が漂っているような気がする。しかも、前作「フルメタル・ジャケット」から12年ぶりの難産。命を懸けてこの作品を撮った意味は何なのか。

ニューヨークに住む裕福な夫婦。妻から他の男性とのセクシャルな妄想を抱いたという話を聴かされ、動揺する夫。そして旧友の紹介で仮面の秘密パーティに出て、その倒錯した狂気と幻想とエロスが入り混じる混沌の世界に迷い込んでいく。その夫婦を当時実際の夫婦だったトム・クルーズとニコール・キッドマンが扮しているけど、この映画の後、別れた。

性的な妄想や夢なんて、恋人や夫婦問わず、誰だって心に持っている。でも、きっと愛する2人にはそれ以上、覗き込んではいけない深淵がある。人間の妄想には、現実以上の破壊力があり、本当に現実を破壊してしまう。きっと2人もこの映画でどっぷりとその深遠を覗き込んだのだろう。観ている私たちもピアノの不協和音が鳴り響く中、観れば観る程、主人公と共に不安心を煽られる。何だかとても怖い作品だ。

ラストの妻の言葉はあれは、キューブリックの遺言なのか、叫びなのか。

やっぱりこの作品もまたBlu-rayを購入してじっくり観たい作品だ。しかも980円!でも妻には敢えて言いません。妻とじっくり観たくない映画ベスト1 笑