JT

アイズ ワイド シャットのJTのレビュー・感想・評価

アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)
5.0
この世界は不思議なことだらけ
考えれば考えるほど混迷を深める
きっと答えはない、謎は謎のままで

2020 . 16 - 『 Eyes Wide Shut 』

自分がキューブリックを知ったのはこの作品だった。彼のこの遺作が入り口となったのは少し残念だったが、今はそれで良かったと思えるほど本作は深く記憶され、他のどんな映画にも似つかない特別な風情がある。

自分が映画に最も求めてるのは、質より、内容よりも、自分の感性が満たされる完璧な一瞬とその描写であり、それさえあればいくら内容が雑であろうと好きになる。この作品は完璧で特別な類稀なる描写で溢れていた。

現実と虚構と夢の世界に、真実はあれど答えはない。片方が瞳を閉じている時、もう片方は瞳を開けていて、片方が夢をみている時、もう片方は現実をみている。自分がみている世界と相手がみている世界は重ならず、両方が重なる世界は虚構にあり、その逆もまた然り。自分の外側はまるで不思議の世界で、疑惑が生まれる。疑惑に惑わされ、妄想に駆られて、現実で迷子になる。妄想も虚構も夢も現実で、事実は小説よりも奇なり。真実ばかり求めて謎を追究しようとしても答えはない。瞳を閉じて、不思議のワルツに身を乗せ、謎のままに。この世界と、この愛に、答えを出してしまったのなら、瞳を見開いた私たちの人生はなんてつまらないものか。

"Eyes Wide Shut"というタイトルは素敵だけど同時にどこかすごく恐ろしい。だからどこまでも奥深い。
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