TAK44マグナム

ラピッド・ファイアーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ラピッド・ファイアー(1992年製作の映画)
3.5
ブルース遺伝子を継いだ肉体が躍動するハリウッド製アクション!

偉大なるマーシャルアーツスターであるブルース・リーを父に持つサラブレッド、その名もブランドン・リー!
惜しくも若くして事故死してしまった彼ですが、存命中に完成した最後の映画が本作となります。

武術ならぬ美術を学ぶ大学生のブランドン・リー。
ヌードモデルからのデートの誘いに、ついつい鼻の下をのばして意気揚々と出掛けたまでは良かったのですが、そこで麻薬密売組織の内輪もめに巻き込まれて殺されそうになっちゃいます。
父親がCIAの空手教官だったブランドン・リーは持ち前の空手を駆使して何とかピンチを脱しますが、イタリアンマフィアのドンによる殺人を目撃してしまったためFBIの監視下に。
当然、マフィアからは命を狙われる羽目になります。
FBIの隠れ家でも襲われ、絶体絶命のブランドン・リーを救ったのは、シカゴのアウトロー刑事で麻薬組織を追うパワーズ・ブースだったのでした。
パワーズ・ブースはブランドン・リーに協力を仰ぎ、タイからの極秘の麻薬ルートを暴こうとするのですが・・・

・・・という、どこにでも転がっているようなお話でありますが、パワーズ・ブースが一般市民のブランドン・リーを利用したりと、とにかく筋書きがメチャクチャ(汗)。
中盤の目玉となるマフィアのアジトでのバトルなんて、警察が外で撃ちまくっているうちに、アジトの中でブランドン・リーが孤軍奮闘、ほとんど一人でマフィアを壊滅させちゃいます!
一般ピープルなのに、この人間凶器度はどうしたことか!?
ジョン・ウー映画ばりの二丁拳銃も披露してくれますよ。
一応、空手は出来るけど美術学生という設定なんですけどね(汗)。

クライマックスでは、80~90年代のアクション映画好きの間では一部で大人気の謎の中国系オジサン、アル・レオンとブランドン・リーの夢のタイマンバトルが実現!
アル・レオンと言えば、「ダイ・ハード」やエメリッヒ版「ゴジラ」などでチラチラと顔を見せる人なんですが、とにかく出てきたと思ったらすぐ死ぬ役が多く、しかもかなり記憶に残りやすい特徴的な風貌(主にヒゲ)というわけで、本国では自叙伝が本屋に並んでいるほどの有名人。
東洋系ダニー・トレホといった立ち位置の役者さんなんですね。「リーサルウェポン」でメル・ギブソンを拷問していたプロの拷問屋役が一番目立った仕事かもしれません。

そんなアル・レオンとのバトルは、けっこう尺をとっていて、パンチやキックの応酬から始まり、タックルのきりあいや派手な空中戦も魅せてくれてお腹いっぱいです。
もしかしたら、本作がアル・レオンにとって最高においしい役どころだったのかもしれません。出番も多いし。

他では、アウトローな刑事を演じたパワーズ・ブースが良い味をだしています。最近では「シン・シティ」シリーズで憎たらしい最大の悪役を演じておりますが、本作では自身の正義を信じ、ブランドン・リーを利用しながらも助けるために奔走する「シカゴ最高の警察官」を抑揚の効いた演技で好演。
パワーズ・ブースの右腕的存在でブランドン・リーと恋仲となる女刑事を演じたケイト・ホッジは、どこかリー・トンプソンやジョディ・フォスターを彷彿させるルックスで、個人的に割と好み。
唐突に始まって驚くブランドン・リーとの濡れ場では、オッパイもチラリと披露してサービスしてくれていますよ。
繰り返しますが、本当に唐突に始まってビックリしました(苦笑)。

で、主役をはるブランドン・リーですが、映画数本に出演してきたキャリアの甲斐もあってか、「ファイヤードラゴン」の頃よりも演技も様になり、動きもシャープさが加わって良くなっています。
ブルース・リーほどのスピード感や切れ味の鋭さは感じられませんが、ヴァンダムやマーク・ダカスコスなどと同等か、もしくはそれ以上の「アクション俳優としての引き出しの多さ」をもっていると思わせてくれる、剛と柔を合わせもった動きは魅力的です。
本作の格闘アクションは、香港アクションほどではないにしろ、時折ハッとさせてくれるものがあります。
ドラマはありきたりでも、ブランドン・リーのアクション目当てなら、それなりに観られる映画ではあるでしょう。

それにしても、主人公の父親がCIAの仕事で中国に潜入、天安門事件で殉職し、主人公自身もその場にいたというトンデモ設定は、現在のチャイナマネーに頼り切りのハリウッドでは当然の如くタブーだろうし、勿論、香港や日本でも微妙すぎて取り入れられない設定でしょうねえ。
そんな神(中国共産党)をも恐れぬ映画の主演が中国とアメリカのハーフであるブランドン・リーってところも、実は隠れた本作のミソなんじゃないでしょうか。
・・・・・・・違うか(苦笑)。

ブルース・リーの息子ってどんなのよ?と、とりあえず観てみるには最適な一本。
凡作ではありますが、密かにアル・レオンが気になっていた人にもオススメできますね。


セルDVDにて