butasu

レクイエム・フォー・ドリームのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

鬱映画だと聞いていたので瀕死で済んだが、前情報無しで観ていたら死んでいたかもしれない。ゲッソリする悪夢のような薬物禁止啓発映画。

主人公は4人だが、圧倒的にキツいのはエレン・バースティンが演じる母親サラ。テレビを見ることだけが生きがいだった彼女は、テレビ出演依頼(おそらくただのイタズラ)が来たことによりすっかり舞い上がってしまう。ダイエットピルとして覚醒剤を処方されたことから、平凡な老婦人だったサラがどんどん狂っていく様子は観ていて本当に辛い。中盤、心配する息子に対し、自分がいかに孤独で哀れであるかを訴えかけるシーンは圧巻。そして結局彼女は精神病院に入ることになるのだが、そこで行われる治療が本当に酷く、最終的には電気ショック療法により廃人になってしまう。仕事が順調な息子とともにテレビ出演する夢を見るシーンで終わるのが、胸をかきむしられるように辛い。彼女の場合は他の3人と違って自業自得とは言えない要素が強く、本当に可哀想でしんどかった。

残り三人も勿論キツい。腕を切断することになるハリーも、刑務所でキツイ目に合うタイロンも。そして、凌辱パーティーで薬物を得ることを覚えてしまったマリオンも。三人とも自らの意思で薬物中毒になっているとは言え、特にマリオンは観ていて本当にキツかった。女はなまじ手段がある分、ヤク中になると自らえげつない世界に踏み込まざるを得なくなるんだなぁ。

4人の絶望がハイスピードで交差するクライマックスシーンは本当に凄い。しんどさの極み。この映画の何が凄いかって、こんなにただただキツイ内容なのに、終始目を離すことを許されずに最後まで一気に観てしまうのだ。ヤクをキメるときの見せ方に始まり、全体の演出に工夫が凝らされている(しかもそれぞれの演出にちゃんと意味がある)。音楽も非常にハイクオリティで、最悪で最高。

「夢への鎮魂歌」というタイトルが胸をえぐる。誰一人夢を叶えることは出来ず、その可能性すらもおそらく潰れてしまう。めちゃくちゃ鬱なのにまた定期的に観たくなってしまう、これ自体が麻薬のような映画。
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