ダーク魔カスコス

ひめゆりの塔のダーク魔カスコスのネタバレレビュー・内容・結末

ひめゆりの塔(1995年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

🌺🌺ひめゆりの塔🌺🌺
〜こちらがキレイなひめゆりの塔入口です〜

第二次世界大戦の沖縄戦「ひめゆりの塔」を題材にした戦争映画です。

実際に「ひめゆり平和祈念資料館」を訪れて学んだ歴史と比べると、果てしなくぬるい描写が続いて違和感を覚えます。「資料館で想像していた地獄とは全然違う。描写しきれていない。」と感じました。

しかし、テレビで放送したり、子どもが歴史を学んだりするにはいい映画だと思います。沖縄戦を考える入口となるでしょう。

⚠️以下ネタバレです⚠️
※映画ミストのネタバレも含みます

ネタバレといっても史実なので悲惨な結果になるのはわかっているとは思います。ひめゆりの塔を扱った作品はいくつかあるようですが、本作では自決ではなく投降するので見やすいかもしれません。

上にも書きましたが描写がぬるいと感じました。ひめゆりの塔はもはやホラー監督に撮ってもらった方がしっくりくるほどの凄惨なテーマだと思います。次に映画化するならばアリ・アスター監督あたりと日本人が協力して撮ってみてほしいです。

🎬明るい
豪の中が明るいです。資料館で見た資料ではもっと暗そうでした。明るい地獄などありません。照明の仕事がいまいちです。

🎬優しい
負傷兵が思っていたより優しいです。もっと怒号がとびかう病院だと感じていたので拍子抜けしました。

🎬落差がない
資料館での「病院は攻撃されないと思っていた」「最初はピクニック気分だった」という証言から感じられる当時の認識の甘さと、日常から地獄に叩き落とされる衝撃。そこをあまり映像化できていないと感じました。
日常の描写が少なく、学生感が足りません。

🎬負傷描写がほぼない
「ハラワタが出る」「体が半分なくなる」「どこが口か分からないほど顔をやられていた」という証言があるように、戦争は悲惨です。ところが本作ではちょっと血が出たり、すりきずがあったりする程度におさえられています。足がなくなる人物もいましたが、かなりきれいに抑えた描写でした。「ランボー最後の戦場」くらいの容赦のない人体破壊の方が、本作には合っていると個人的に思いました。

🎬ミスト感不足
「あのとき選択をかえていれば、自殺をしなければ友達は今も生きていた」という、結果を見て初めてわかる選択ミスという悲劇をまったく描いていませんでした。映画ミストの衝撃のラスト、それが現実にあったんです。なぜ盛り込んでいないんでしょう。

全体的にきれいなひめゆりの塔ってかんじの作品でした。

ひめゆりの塔自体も沖縄戦を考える入口です。「非戦闘員の女学生が戦争にかつぎだされて悲惨な最期を迎える」という、かなりわかりやすい悲劇なので有名になったんでしょう。
しかし、同じ運命を辿ったのはひめゆりの学生だけではありません。他の学校も同様の惨劇にみまわれています。もちろん女学生だけでもありまけん。男子学生は病院ではなく戦地に放り込まれています。命に子供も大人も兵隊もありません。女も男も関係ありません。かつての沖縄県民全体の4分の1が死んでいるのです。

ひめゆりの塔はその象徴だと感じました。