世間の価値観が理解できず、昆虫採取が趣味の男が女性を誘拐監禁するという、一線を越える映画。お金やモノを与えることで他人の気持ちまで手に入れられると思っているカオナシみたいなやつだ。こんなやつに目をつけられたのが運の尽き。女性は「砂の女」のように、脱出できそうだが、ギリギリの所で阻まれるという不条理の檻に閉じ込められる。
そして何よりいちばん怖いのは男が自分の行為を間違いだと微塵も思っていないらしいことだ。こんなに尽くしているのにどうして僕のものにならないの?という変態の叫びが映画を通して聞こえてくるようだ。男のその必死さ故にこちらも監禁場所に突然の来訪者が現れたシーンでは、つい応援してしまったのが悔しい。