特濃ミルク

ヤコペッティの大残酷の特濃ミルクのネタバレレビュー・内容・結末

ヤコペッティの大残酷(1974年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

 バカみてぇな映画だ。でもそのバカの一皮を剥けばある種の厳粛さ、真理なんかが仄見える。[※なんか勘違いしているレビューが散見されるから一応言っておくと、原作を含め、この作品は決して「最善説」が完全に正しいから、それを無理に押し付けてやろうとする作品ではない。この残酷な世界を「最善」だと残酷に肯定するような残酷な人間に一石を投じるためのものだ(ろうと個人的には思う)。]
 「この世のすべては最善である。」師匠パングロスにそう教え込まれたバカなカンディードは楽園を追放され、残酷さを剥き出しにしたナマの世界をその目で見る。
 楽園の裏側には地獄が、富裕の裏側には貧困が、平和の裏側には戦争が、王の裏側には奴隷がある。こんな世界のどこが「最善」なんだ。カンディードは納得ができない。俺も今のところ納得できない。なんで「最善」の世界で戦争が起きて、今も罪もない子どもたちが殺されているんでしょうな。
 …まあでも結局はこの映画のラストのように、最善説を肯定することでしか世界を、人生を肯定する事はできないのかな。色々と考えさせられる。何度生まれ変わっても、何度歴史を重ねても、また同じ過ちを繰り返すだろうということ…。つまりはその選択のひとつひとつが「最善」の道だったんじゃないかということ…。
 あれこれと後悔したりして、よりよく生きる道を探すのは勿論大切だが、歪んだ現状もひっくるめてすべてを肯定し、「これが人生か。よし、もう一度!」というニーチェ的な最善説思考もやはり必要なんかなぁと思うな。そうじゃなきゃ皆ある種の「間違った」人生を送ったことになるもんなぁ。
 …まあそんな事考えんでもいいくらいバカでナンセンスで最高な映画だが!
 とりあえずカンディードはどれだけ酷い目に遭おうが、何度尻を叩かれようが、またクネゴンダ姫に恋しただろうとは思うな。過ちがなければ、きっと悟りも無い。
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