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東京タワー オカンとボクと、時々、オトンのYAEPINのレビュー・感想・評価

4.5
リリーフランキーが、女手一つで自分を育てた母との関わりを、自伝的に描いた作品が原作となる。

闘病中の母と、それに付き添う主人公が現在進行形の物語として描かれ、その合間に2人が歩んだ半生がフラッシュバックで挟まれる。

正直、母と息子の物語が迎える結末は容易に想像がつくし、それを念頭に置いた状態で2人の過去を回想していくため、どう頑張っても涙腺が緩むことは避けられない。
それでも、2人とオトンの関係性や、それぞれの人となりが丁寧に表現され、自然と共感し寄り添えるようになっていたため、感傷ムードを押し付けられているようには感じなかった。

特に、脚本に頼らず、小道具などの配置から人物のキャラクターを示す点が秀逸だった。
高校時代からなんだかんだ関係を続ける平栗くんが、紆余曲折を経て開いたバーのシーンで、それが顕著に現れていた。
全編的にモノローグが多い作品にもかかわらず、直接的な説明は抑え目にして、映像によって人物の特性を雄弁に語っている。

樹木希林と実子の内田也哉子が演じる母は、あくまで息子からの視点でしか描かれないが、最後のシーンで、彼女は母としてという前に、1人の人間として息子に愛情を注いで精一杯生きたのだと感じ、胸を打たれた。

主人公のオダギリジョーは、彼特有のルーズで気ままな雰囲気を全身に纏いつつも、母の病気をきっかけに献身的に母を支える姿がいじらしかった。
前半で主人公の勝手気ままな暮らしぶりが存分に映される分、後半で母を気遣うシーンに主人公の成長を感じた。
一時期はやんちゃをして、常にいい息子であり続けた訳ではない、という点が誰しも思い当たる部分だったかと思う。
少年時代を演じた冨浦智嗣も、純朴で好奇心いっぱいで可愛らしかった。

宮崎あおいや柄本明など、カメオ出演が非常に豪華で楽しかった。
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