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パスト ライブス/再会のYAEPINのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.3
善良な人々しか登場せず、音楽も映像も美しい映画だったが、予告以上の情報と目新しさがほぼ無くて驚いた。

演技も含めて、2人の男性陣には惹き込まれた。
特に主人公の夫は不憫で仕方がない。
円満に過ごしてきたと思っていた妻から幼い頃の想い人の話をされ、挙句急に会うと言ってくる。妻の愛に不安を抱きながら3人で食事をすることになったが、気づけば会話には置き去りである。最終的に綺麗な別れを経て涙ながらに戻ってきた妻に肩を貸す。
少なくともあの夫ほどの寛大さは私には無い。あの器のデカさを手に入れた暁に、この映画の良さが分かるのだろうか。

想い人ヘソンを演じたユ・テオが若い頃の佐々木蔵之介みたいで非常にかっこよく、こちらもいじらしかった。
12年がかりで見つけた初恋の人と画面越しに再会した時の、愛おしさと会えない苦しさに満ちた目線には心打たれた。
とはいえ、何故彼女にそれだけ執心していたのかはあまりピンと来なかった。
思い出に幻想を抱きひたすら追いかけている姿は、新海誠作品に出てきそうである。

渦中のヒロイン、ナヨン改めノラについては、安泰な生活を手に入れた状態で、過去の美しい初恋に美しいまま区切りを付けられて良かったですねという感情しかない。
ただ、若さゆえ野心的にギラギラしていた頃から、伴侶を見つけて心地よい安定に身を委ねるようになる変遷は、演技でよく表現されていた。

分かりきったストーリーで、登場人物も限定的だったにもかかわらず、不思議と眠たくならなかったのは、些細な表情や所作の動きに目を凝らしたくなる撮影ゆえかもしれない。
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