YAEPIN

i aiのYAEPINのレビュー・感想・評価

i ai(2022年製作の映画)
3.8
全編通して、ベタすぎる展開と編集、歌詞やライブMCをそのまま読んだようなセリフの連続で、てらいなく言えば「ダサい」のだが、棘のように刺さって抜けない作品ではあった。
ちゃっかりステッカーを買い、サントラを聴き返し、公開1ヶ月記念で貰ったフライヤーをファイリングしてしまっている。

その引力も、豪華俳優陣の腕力と、キャラクターの魅力によるものだと思われる。
がむしゃらで、痛いほど真っ直ぐで、様々なものを乗り越えて前に進もうともがいている。みんな漏れなくクサくてダサいのだが、どこかで羨ましく思う自分もいる。
特にヒー兄の弟であるキラは、兄に対する尊敬と怒りが複雑に絡み合う中、何とか自分の気持ちに折り合いをつけていく過程が愛らしかった。

主人公のコウを演じた富田健太郎が、マヒトゥ・ザ・ピーポーの盟友である「踊ってばかりの国」の下津光史にそっくりで驚いた。上裸になりながらギターをかき鳴らす姿は、完全に彼のライブでの様子をトレースしたもののように見える。
エンドロールのロケ地提供に「下津の実家」と書いてあったが、どこで使われていたのだろう。

森山未來演じるヒー兄は、赤装束が似合いすぎてカリスマ性ばっちりなのだが、行動があまりに反社会的すぎて、なぜここまで愛されているのか少し不思議だった。
ただ、彼とるり姉のカップルは素敵だった。互いの魅力にぞっこんで、慈しみ合っていることが感じられた。
彼のバンド「微々」のライブシーンはシャウトの熱量が素晴らしかったので、もう少しライブシーンを観たかったと思う。

映像としては、ほとんど全ての画面に執念深く散りばめられた生命の赤と、海や死の表象と思われる青の、鮮やかなコントラストが眩しい。

それにしても、タコを日本刀で刺し、食べ物をぐちゃぐちゃにし、犬も無事ではない映画なのに、ドラッグだけ出てこないのは若干違和感があった。
この登場人物たち誰1人やってないなんてことあるだろうか???
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