Yukenz

東京タワー オカンとボクと、時々、オトンのYukenzのレビュー・感想・評価

4.0
樹木希林と内田也哉子の親子出演とあって、晩年と若い頃のオカンがそっくり。はじめ内田也哉子と分からず、随分と似てる役者を見つけてきたんだなぁと思っていたが、途中で気付いて納得。画面の中の樹木希林はもう私の中では理想の母になっていて、息子への愛情がたっぷりと感じられ、料理も上手でいいなぁと眺めていた。

オカンが東京に来てからは、オダギリジョー演じる「ボク」のたくさんの仲間たちに慕われ家に人が集まりとても賑やかに。オカンの人柄がよく分かる。でもこれは「ボク」の人柄でもある訳で、この親にしてこの子ありと言ったところだろうか。

そもそも「ボク」が30歳の時に田舎のオカンを東京に呼んで一緒に暮らすという発想は、2人のとてもいい関係性の賜物。それまで「ボク」が散々かけてきた迷惑の罪滅ぼしということもあるのだろうが、義務感だけではなかなか出来るものではない。オカンにしてみても、永年の生活の場を捨て知り合いのいない別世界で生きていくのは一大決心であり、「ボク」を絶対的に愛し信頼していなければ出来ない。

オカンが入院し闘病が始まると、それまで疎遠だったオトンも病床に駆けつけてくる。オカンが急にしおらしく乙女になるところは束の間微笑ましく、結婚は上手くいかなかったけど、オトンを憎む訳でもなく、好きという想いをずっと持ち続いていたんだなぁと感じ入る。これもオカンの人柄か。オトンを演じる小林薫の飄飄とした様子も良かった。

そして時の経過と共に「ボク」と周りの人たちの関係性の変化を描いているのもいいスパイスになっている。
特にオカンが上京して最初の年に「ボク」と当時付き合っていた彼女の3人で、いつか東京タワーの展望台に一緒に行こう、としていた約束を果たす様子がほろ苦くて、この先どうなるの、と見る側の気を揉む。

福山雅治のエンディング曲「東京にもあったんだ」も映画にぴったりあっていて好き。曲自体は勿論前から知っていて何度も聞いているけど、映画を見終えてから聴くとまた格別な思い。

総じて樹木希林の素晴らしい演技に惹きつけられっ放しなのだが、これはもうどうしようもないです。彼女は日本のオカンであり、宝でしょう。
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