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ヒートのdeenityのレビュー・感想・評価

ヒート(1995年製作の映画)
5.0
170分という長さに見るのを少し躊躇していたが、これはまあ文句なしの傑作だった。映画界の二大俳優アル・パチーノとロバート・デ・ニーロのW主演を果たす。この二人が繰り広げる超骨太ワイルドな逃走劇。これで面白くないわけないのだ。

まず冒頭から心を鷲掴みされる。警察の輸送車を襲撃した事件。完璧に練られたシナリオによる完全な強奪事件。大胆且つ迅速な行動で、警察に全く尻尾を掴ませない。ちょっとしたアクシンデントによる問題も見事な対応で、逆に彼らの凄さを際立たせる。そんな窃盗団の親玉を演じるのがデ・ニーロ。漂うカリスマ性と品の良さが悪党とは思わせないオーラを放っていた。
それを追うのが一度狙った獲物は逃がさない執念深い刑事を演じるパチーノ。『カリートの道』なんかではマフィアの親玉をやったりもしているわけだし、警察ながらにアウトローな感じがワイルドでかっこよかった。
この二人が関わるきっかけとなる事件だったわけだが、この一連の流れだけですでに凄腕のプロフェッショナルっぷりが伝わり、かなり熱くさせられた。

二人が衝突するシーンはいちいちかっこよすぎて挙げだすときりがない。何、あの暗視カメラ越しに睨みつけるあの目。サーモグラフィーのような画面だからはっきりと見えてないのにどうしてあれだけ眼光の鋭さがわかるのか。また、警察が上手を取って追い込んだと思ったらハメられたという港コンテナでのシーン。見事にしてやられたはずなのにパチーノの潔さがなぜあんなにもクールなんだろうか。

とは言え前半部分はまだ少し物足りなさもあった。しかし、残りの90分弱での息つく暇も与えない怒涛の展開の吸引力はなんだ。3時間近い作品で後半にきて尚惹きつけられるなんて本当に驚きだった。

まず本作において欠かせない名シーンでもあるはずの街中でド派手に始まる銃撃戦。飛び交う銃弾の嵐。住民の悲鳴。穴だらけになる車。命がけの死闘。恐ろしいまでの迫力だと思っていたら実際の銃声を使っているそうで、目で見てわかるほどの激しさにさらに拍車がかかっていた。こんなの血が騒ぐに決まっているじゃないか。

さらにそんな二人が喫茶店のテーブル越しに対峙するシーン。そこでまさか何も始まるまい、とはわかっていても互いに意識し合ったあのピリついた空気感。互いの腹の底を見抜こうとし、片や喉元に食らいつくかのような威圧感を放ち、片やそれをいなすかの如く表情を浮かべつつ、ただその中でも射るような目つきを変えない。ヒリヒリする空気感がたまらない。

互いに信念が通っているからこそここまでクールなんだろう。二人の演技がグンと本作の魅力を引き上げていることは間違いない。
最後のシーンも見もの。なんだよ、そのカメラワーク。え、やられるの?どうなるの?ハラハラが止まらないじゃないか。正直どっちもやられて欲しくないよ。でもどっちかが勝ちっていうのも良しと思えないし。
うーん、これだけ熱くなったのは久しぶりだ。名作。
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