初キェシロフスキ。
トリコロール三部作の存在はずっと前から知っていて、気になっていた。
説明を削り、映像で語りを進めていく、キェシロフスキの手腕には唸らされた。
コーヒーカップの影が時間の経過を伝えてくれる。キェシロフスキ、好きだなぁ。
幕があがってすぐに、観客は数分後に起こるであろうことを知る。
どうか走り出さないでくれと思わずにはいられないが、止まらない。
少しずつ明らかになる夫婦の歪んだ関係。愛とはなんだったのか、なんであるのか。
静謐な映像、美しい青、陰影、何度も繰り返し使われる音楽。
キェシロフスキの作り出す世界に魅了されていた。
私が言語化するには、もったいない。
見終わったあとの感覚はなぜだか、ミツバチのささやきを思い出した。
フランス語の作品でありながらも、
やはりフランス人の監督にはこの世界観は作り出せないのではないのかしら。
ジュリエット・ビノシュの抑えた演技、感情を表出させないように、泳ぎ続ける彼女、生き続ける
彼女の一挙一動から目が離せなかった。
エマニュエル・リヴァ。私が敬愛する女優の一人。見ている本数は少ないけれど、
どんな時も私の目を惹き付けてやまない。ああなんて、美しい最期。
最後のシークエンスが、もう。
疲れているから、見切れていないところもあるし、なんだか余裕がないから、
もっと、落ち着いてもう一度見よう。
そうすれば、きっとキェシロフスキの映画はもっと優しく私に入ってきてくれる。