tak

007/ゴールデンアイのtakのレビュー・感想・評価

007/ゴールデンアイ(1995年製作の映画)
3.5
80年代のテレビ番組「探偵レミントン・スティール」で人気があったピアース・ブロスナン。90年前後にはタバコ(Speak LARKってヤツね・懐)のCMで、まさにスパイ映画のような役柄を演じていたのをよーく覚えている。そして5代目ジェームズ・ボンドを襲名することになる。

ピアース=ボンド第1作「ゴールデンアイ」は、時代の変化が色濃く反映された作品となった。1991年のソビエト崩壊後、最初に製作された007作品なので、国家間の露骨な東西対立が描かれる訳ではない。旧ソ連が開発していた武装人工衛星をめぐる、ロシアの犯罪組織ヤヌスの陰謀が物語の主軸だが、ボンドを追いつめる別な悪役が登場する二重構造。敵味方と単純に二分できない筋書きは、複雑な世界情勢の反映でもある。

007映画の華である女性キャストは、ロシアの秘密宇宙基地のプログラマーであるナターリャ。演じるイザベラ・スコルプコは東欧出身。ロシアの女性と親密になる展開は「ロシアより…」や「私を愛したスパイ」があるが、それは任務を帯びた敵味方だった。本作ではロシアの一般女性で、ボンドが彼女の窮地を救う王子様の様に描かれるのは面白い。

しかし。ボンドの職場MI6も様変わり。新任の上司Mは女性となる。ジュディ・デンチはこれが初登場で、ダニエル・クレイグ主演作まで続くことになる。上司はボンドを「冷戦の遺物」と呼び、秘書マネーペニーにセクハラ呼ばわりされる始末。ボンドの肩身が狭くなる時代が来るなんて。公開当時、オールドファンはこうしたやり取りに唖然としたに違いない。

されど、マネーペニーは、
「誘いをかけるばっかりはセクハラ。そうでないならちゃんと行動で示して」
と言ってる訳で、決して拒絶しているのではないのだな、と再鑑賞して今さらながら気づいた私。初見からウン十年経ったけど、その間に、マネーペニーのこの台詞に似たようなことを、自分も言われたこともあったよな、なかったような。映画で気付かされること、あるよね(汗)。

本題に戻ります。

ピアース・ブロスナンのボンドは、スマートだし、アクション場面も派手でカッコいい。冒頭のダムからのダイブは印象的だ。ましてや飛び立つセスナ機を追いかけて飛び乗るなんて、戦車で追跡して街を破壊するなんて、歴代ボンドの誰もやってない。でも、何故だろう。これまでの先達ボンドに感じていたヒーローとしての余裕や危険な香りとはどこか違う。マシンガンをぶっ放しながら失踪するアクション場面はスリリングだけど、それがジェームズ・ボンドでなくてもいい気がした。従来のゴージャスなスパイ映画から、仕事熱心なエージェントが活躍するアクション映画にシフトした印象。

ジェームズ・ボンドこそ男子の理想と刷り込まれて育った僕だったが、前作に続いて本作も劇場鑑賞していない。鑑賞記録はビデオで観た初回を記す。
tak

tak