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仁義と抗争のblacknessfallのレビュー・感想・評価

仁義と抗争(1977年製作の映画)
3.3
1977年だから実録ヤクザ路線の最晩年の作品になるのかな?
作ってる側も何をどうやっていいか掴みかねたまま撮ってしまってる印象が笑
そのアンバランスなとこが後追い視点で見ると興味深い。
シリーズものの映画でも、音楽のジャンルでも最後期には、始まりとはかけ離れた珍品が出てくるってよくあることで、マニアはその変遷に触れるのが楽しみだったりするので、そーゆージャンルの極北的なモノを発見した時のトキメキがあった笑

ハッキリ言って実録モノの名残を残してるのは「仁義と抗争」ってタイトルだけ。
このタイトルならそれなりの格のある組長あたりが主人公だと思うけど、主人公は松方弘樹さん演じるフリーの殺し屋の"ババ伝"ババ伝の由来は仕事を依頼したクライアントが何故か必ず死んでしまうことから、ババ抜きのババにかけられてそう呼ばれるようになった。
依頼主が死ぬってけっこうおもしろい設定だと思うけど、残念だけどさほど活かされてないんだよね、話の中で。

タイトルと主人公の設定もチグハグなんだけど、ストーリー展開もなかなかチグハグなんだよな。
前半はコメディ・タッチなノワール調でババ伝の仕事ぶりやプライベートが画かれる。
やくざ映画としてはカラッと軽妙な演出は薄っすらだけどタランティーノのレザボア・ドッグス的なオフビートなおもしろさがあった。
ババ伝はフリーの殺し屋なのにちゃんと内縁の妻的な女性がいて、彼女は小ぢんまりとした焼肉屋を経営してる。
ババ伝が帰ってくると、従業員や店の常連が、「兄貴(ババ伝)おかえり~」みたいに普通に声かけてるんだよね、しかもみんなババ伝が殺し屋だって知ってる笑
殺し屋で定住して妻もいて、おまけの周りの人間がそれを知ってるってかなり変だよね笑
変と言えば、ババ伝、妻の他に愛人もいるんだけど、それがあき竹城なんだよ。
妻役の松本留美さんが目が大きくて愛くるしい美人なのに何故肝っ玉母ちゃんじみたあき竹城に入れ込むのか?ババ伝😂?

前半はこんな感じで抗争も仁義も出てこず、ババ伝と妻、愛人の痴情のドタバタ劇が画かれたりけっこうカオス状態で進む。

そして、後半、北関東の小さな温泉街のヤクザの勢力争いにババ伝が介入することになって、よーやく仁義と抗争が物語に浮上してくる。
この後半は温泉街の組の抗争や内部事情に話の焦点が絞られていく。縄張り争い、跡目問題、他所から侵攻してくる巨大組織の圧力等、お馴染みの展開が次々出てきて普通のヤクザ映画になってくる。
普通のヤクザ映画であって実録モノの普通ではないんだよね。
意識的に実録以前の古いヤクザ映画的な演出を多用して撮ってた。舞台が70年代なのに着流しのスタイルが多かったり、ドスや日本刀を振り回す立回りなんかに正統派の任侠に回帰してやろうって意志を強く感じた。

前半が軽妙なコメディ・クライムて後半がベッタベタの任侠路線で映画としてバランスを大きく欠いてしまっている。てか、完全にとっ散らかって一貫性が崩壊しちゃってる笑
でも、そこがけっこうおもしろいんだよな笑

ジャンルの中で斬新なことをやろうとして色々明後日の方向に行ったものの、なんか変なおもしろ映画に結果的になってしまった感じかな笑
これって積極的にやろしとしてコケた時のおもしろさなんだと思う。

キャスティングに長門裕之や中村敦夫なんかの実録ヤクザ映画に出てない人を起用してたし、志は高かったんだと思う。
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