みかんぼうや

ロード・オブ・ドッグタウンのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

4.3
【圧倒的にクールなセンスとノリにとにかくシビれまくる!実話をもとにした1970年代後半のスケボーブームの火付け役となった男たちの青春群像劇】

なんだろう、この感覚。スケートボードにそれほど興味があるわけでもなく(オリンピックで日本選手をちょっと応援していたくらい)、ましてやその歴史や有名ボーダーの知識など皆無で、本作も本来それほど好みのタイプの作品ではないのに、この作品、ドツボだったのです。

人によって映画の好みや評価軸はそれぞれだと思いますが、私は独特なストーリー展開や繊細な人物描写(特に人の温かみから狂気性まで心理描写)を通じたメッセージ性のある作品が特に好きでハマりやすい傾向にあります。

その点で言うと、本作は後半に入るまで、独特なストーリー展開や繊細な心理描写が魅力的という印象はなく、どちらかというと“ノリと勢い”の強さを感じる作品で、そこまでハマる要素があるわけでもないのに、とにかくオープニングから若者たちの“ノリと勢い”が他の映画でもなかなか味わったことがないほど群を抜いていて、急に後ろから凄い勢いで肩を組まれて引きずり込まれるかの如く、グイグイと作品の世界に没入していくのです。

話や作風は全く違いますが、「シティ・オブ・ゴッド」を思わせるような圧倒的にダイナミックで躍動感溢れる独特なカメラワークや映像と、その映像から生み出される登場人物たちの活力。バックで流れるセンス溢れるアメリカンロックミュージック。そして、本作の肝でもあるなんともスタイリッシュでスピード感のあるシンプルに“クール”なスケボーシーンと、それに夢中になるカリフォルニアのティーンたち。これら全ての要素にただただ痺れ、ワクワクせずにはいられなかったのです。

正直、前半はカリフォルニアのちょい悪ティーンたちが周りを顧みず無我夢中でスケボーに取り組む様子がひたすらに続くので、ストーリー展開云々より、ノリとセンスで突き抜けている作品、という感覚でした。でも、そのカッコよさが圧倒的過ぎて、映画としてそれで十分面白いと思っていました。

ところが、後半に入ると、ノリと勢いで一緒に過ごしていた仲間たちがそれぞれの道を歩み始める。ここから、一気にヒューマンドラマ性を増し、一人ひとりの登場人物の個性や価値観もより見え始め、作品としてさらに違った魅力が現れます。

この将来のことなど考えず勢いだけで突き進む無双状態のティーンたちが、少しずつ大人になり、現実を直視し、それぞれの道を歩み出す爽やかな青春と先に待ちうける現実の哀愁漂う雰囲気が、邦画ですが私の大好きな「佐々木・イン・マイ・マイン」のそれに通じるところがあり、とても好きでした。

そして、あのラスト。なんとも絶妙で思わず涙してしまいました。とても映画的な展開で、さすがに作り話かなと思ったら、この部分も実話だったようです。

そんな前半の疾走感と後半の人間ドラマとしての哀愁がなんとも絶妙で、スケボー興味なし人間にもドハマりする素晴らしい作品でした。

最後に一つ。本作の序盤から登場するティーンたちを束ねるスキップという男。彼が男の私から見てもなんとも色気があってカッコいい兄貴肌の男なのですが、なんと演じているのがヒース・レジャー。私、キャストを観ていなかったので、最初全く気づかず(サングラスをかけていたので)途中で気づいて驚きました。この3年後に、あの“ジョーカー”を演じるのですよね。同一俳優とは全く想像すらさせない熱い男の色気。改めて変幻自在な彼の演技の凄さを実感しました。本当に魅力的な俳優さんです。

実は、彼の演技の中でも最も評価の高い作品の一本である「ブロークバック・マウンテン」は未鑑賞。最近U-NEXTで配信が始まったようで(半年前くらいには無かった記憶が・・・)、本作を観て、こちらも必ず観なければ、と思ったのでした。
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