シンタロー

完全な遊戯のシンタローのレビュー・感想・評価

完全な遊戯(1958年製作の映画)
3.5
石原慎太郎原作×舛田利雄監督作品。何不自由なく裕福に暮らしている壮二は、学生仲間の戸田、沖津、秋谷と時間、好奇心を持て余していた。川崎競輪場と吉祥寺のノミ屋の連絡時間のタイムラグを利用して、ノミ屋から配当を奪おうという戸田の計画に飛びついた。色男の富田を仲間に加えて、緻密な連絡網を作り、大穴に金を放り込む。まんまと成功し、配当は34万円だったが、ノミ屋の責任者・鉄太郎に金の用意が足りず、ヤクザの仲介で20万円を先に受け取るのだが…。
原作は裕福な不良少年グループが、精神疾患のある少女を輪姦し、女郎屋に売り飛ばそうとするとんでもない話。それを"遊戯"と表現した事がショッキングだったわけで…本作は脚色と改稿を重ねたとのことですが…ほぼ別モノ?として楽しむのが正解なのかな。前編は、ノミ屋相手に詐欺を繰り広げていく過程が、スピーディーかつコミカルに、"遊戯"感覚の犯罪として描かれていて秀逸。音楽やカメラワークはスタイリッシュで、5人の学生のキャラクター設定も活かされてます。
後編では、残金を払う気のない鉄太郎の妹・京子を誘拐、恐喝という、第2の犯罪計画が描かれますが、前編とは異質感が…ここからが原作寄りと言われればそうなのかもしれないし、小林旭&芦川いづみの見せ場なのかもしれないけど…ある人物に訪れる悲劇が、あまりにも理不尽で嘆かわしくて…それを笑って踊って、平気でいようとするのが、実に胸糞悪い。犯罪者ながら愛すべきキャラクターだった人達にまで、ゾッとさせられてしまいました。
主演は小林旭。言うまでもない大スターですけど、家では裕次郎や旭の映画はほとんど観たことなかったな…本作も芦川いづみが出てるから祖父と観たんだと記憶してます。人気爆発する前なので、初々しく爽やか。まだ芝居にも癖がなくて見やすいです。芦川の薄幸のヒロインものはこれが始まり?輪姦はカットされ、変更になったようですが、それでも十分悲惨。他の日活女優とは明らかに異質で、そこが魅力とも言えます。晩年は三谷作品なんかにも出ていた梅野泰靖が冷徹なワルを好演。美貌がまぶしい岡田真澄は、ヤバいキャラで作品の華、スパイスになっていて素晴らしい。
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