あおや

インサイダーのあおやのレビュー・感想・評価

インサイダー(1999年製作の映画)
4.2
タバコ業界の闇を巡り巨大権力、告発者、メディアの間で繰り広げられる駆け引き、そしてそこに生まれる人間ドラマを描いた実話を基にした作品。

タバコ業界のトップ企業B&W社の重役ジェフはある日突然解雇されてしまう。安全性に対する業界の不正を知り得る立場にいた彼は、人気報道番組『60ミニッツ』のプロデューサー・ローウェルから、その不正に関するインタビューの話を持ち掛けられることに。秘密を漏らさせまいと“守秘義務”と“金”を盾に脅され、失意に暮れていたジェフであったが、ローウェルに焚き付けられる形でついには業界の内幕を暴くことを決意。しかし、巨大権力B&W社の手段を選ばない圧力は想像を超えるものであった。職、生活、家族、名誉。全てを失ってまで告発を試みるジェフに、巨大権力はあらゆる手を使って襲いかかる。

確かにジェフの人生は、ローウェルによって滅茶苦茶にされたのかもしれない。彼が唆し、焚き付け、ジェフをその気にさせた。しかしながら、ローウェルから言わせれば、それが“プロ”のジャーナリズムなのだ。

「情報提供者は絶対に見捨てない、そして俺は約束を絶対に守る」

八方塞がりの中で、ローウェルの演説にも似たジェフへの台詞は鬼気迫るものを感じさせる。周囲が尽く権力に屈していく中、ひとり最後の最後まで信念を貫き通し、そして去っていくローウェル(AL PACINO)がもうあまりにも格好よすぎて。

そしてラッセル・クロウ演じるジェフの、怒りか諦め、そして絶望へと変わってゆく様。様々な感情の間を揺れ動いてゆく心情描写が絶妙で、そこに音楽も相まって物語の重苦しさは半端じゃない。

“この事件後、1998年タバコ業界は、全米各地で2460億ドルもの示談金を払った”

ジャーナリズムとは。
プロフェッショナルとは。

そんなことを考えさせられる、まさにいぶし銀の映画作品。
あおや

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