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フォレスト・ガンプ/一期一会のtakのレビュー・感想・評価

3.5
今さらなんだが、実は初めて観た。確かにねー、アメリカ近代史と並んでまさに走り抜けるフォレストの半生は面白い。"そのままの自分でよいのだと教えてくれる癒しの映画"みたいな言われ方をよくするけど、そうなのかなぁ。周囲の人々の教えや考えを受け入れることで成功した人ではあるけれど、単に運が良かった人ではない。人並み以上にまっすぐに努力を怠らなかった人だと思うのだ。ハンディキャップもあったろうし、まともに扱ってくれない世間との戦い、思い通りにいかないことだっていっぱいあるはずだ。

フォレストはその時々で注目される偉業を成し遂げたけど、その成功や人の良さを利用しようとする悪党が周りにいなかったことが何よりもラッキーだ。世知辛い世の中だもの、フォレストのような"いい人"につけ込む輩って必ずいる。騙される挫折を経験しないだけに、結局ロバート・ゼメキス監督作らしいファンタジーじゃねぇか、としか思えなかった(まぁ、ラストはジェ二ーに利用されちゃったという見方もできるが)。

現実的な見方しないで、映画として楽しめればいいじゃない、というご意見もあるだろうけど、近代史という厳しい現実を絡めていながら、わらしべ長者のようなファンタジーが共存する居心地の悪さは最後まで拭えなかった。一方でフォレストが慕い続けるジェ二ーの半生は、虐待に自殺願望とネガティブなことだらけ。この対比が時折挟まるから、フォレストの活躍を笑って観ていられなくなる。フォレストの母親が言う「人生は箱入りのチョコレートみたいなもの。食べてみないとわからない」ってことなのかな。ジェ二ーは美味しくないものばっかり選んでしまってたのだろか。

単なる人生回顧録では面白くないから、時代を象徴する人物や出来事をちりばめたのは確かに面白い。ウォーターゲート事件を通報する場面は笑った。母親役のサリー・フィールドがクセのある面白い役柄でナイス。アメリカ音楽の歴史をたどる映画としては、とっても魅力的。観終わって無性にジャクソン・ブラウンが聴きたくなった。あの数年間走り続けるエピソードは、フォレストの無垢で一途な面を象徴するような場面。彼を慕って一緒に走る人々。彼らってSNS時代の今で言うところの"フォロアー"じゃん!と思って観ておりました。
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