Blake1757

ゴジラのBlake1757のレビュー・感想・評価

ゴジラ(1954年製作の映画)
4.0
「東宝チャンピオンまつり」世代なので、モスラやキングギドラ、ヘドラやメカゴジラはたぶん劇場で観たはず(60年代公開作品はおそらくリバイバル時)。
しかしながら、特にゴジラ・シリーズのファンということでもなかったので、この1954年の第1作は初鑑賞(ストーリーの概略は知っていた)。
既に多くの人によって語りつくされている作品に何か付け加えることもないが、聞きしに勝る名作と感じた。前半のテンポの良い展開から、中盤以降の(良い意味で)鈍重な運びへの緩急も心地よかったし、クラシックスタイルの律儀なカット割りは元々好み。
さて、2019年に亡くなった批評家の加藤典洋は本作におけるゴジラを「戦争(第二次大戦)の死者たちの表徴」とし〈*1〉、また、「特攻文学論」の著書を持つ井上義和は加藤の論を受けてゴジラを「戦死者を宙吊りにしたままの戦後社会の『負い目』が具現化したもの」と評した〈*2〉が、この作品を観た上で、改めて優れた批評だと納得する。
ゴジラは原水爆の象徴であると同時に、あの時代の日本に充満していた、「生き残ってしまった者たちによる、戦争で死んだ者への後ろめたさ(サバイバーズ・ギルト)」の現れだという。その意味で、『ゴジラ-1.0』は、この第一作の直系にあたるとは言えるのかもしれない(映画としての出来はともかく)。
また、既に多くの人が語っているであろうが、科学者の芹沢の苦悩の真因は、まさにオッペンハイマーのそれであり、芹沢の存在は、大量破壊兵器の開発を進める「国家」を超えて、それにつながる研究に携わる世界中の「科学者個人」の苦悩を照射していたように思う。

*1:シン・ゴジラに漂う「別世界感」の正体(日経ビジネスWEB記事,2016)
*2:特攻文学としての《ゴジラ-1.0》|第2回(note記事)
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