Blake1757

ナイルの娘のBlake1757のレビュー・感想・評価

ナイルの娘(1987年製作の映画)
4.0
この映画作品において「物語」はさして重要ではなく、極論をすれば、それは有っても無くてもよいようなものだが、それでもこの映画は、強く胸に迫ってくる。
時折挿入される主人公のモノローグは、何かを説明しているようで、説明を拒もうともしている。ほとんど劇伴もなく、主題歌らしき楽曲が時折挿入されるが、それもソースミュージック(劇中に実際に流れる音楽)のような使われ方に近く、情景や感情を説明しているわけでもない。要は、説明を排している。
とはいえ、この映画は、物語を拒否することが自己目的化しているような、いわゆるアートフィルムや前衛映画とも異なり、登場人物たちのリアルな暮らしや姿を映し出す映画としてちゃんと成立していて、気づいたら僕は「物語」の世界に浸り、主人公に同一化していた。
縦に分割された画面、その奥から現れる人やクルマ、色彩や明暗の切り替わりのリズム。それらによって、僕の目はずっと画面に惹きつけられていた。
つまり、まんまとホウ・シャオシェンの術にはまったということなのだろう。
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