ザマス

わが町のザマスのレビュー・感想・評価

わが町(1956年製作の映画)
4.6
走るシーンが多く出てきて、激動の時代を駆け抜けた、男の人生そのものの様だった。

よく言われる、生きがいとか、人生の意味とか、人それぞれにあったりなかったりするもの。男にとってはそれが若き日に異国で躍動する自分だったのだろう。

その価値観を周りの人間にも押し付け、傷つけたりもするが、常に誰かの為を思って生きている。自己中心的な頑固者とはまた違う、温度感がある。

人が亡くなったり、悲しい事も多く起こるが、走り続ける男には立ち止まったり振り返っている暇はない。さっぱりとしていて、爽やかでさえある。

明治から大正、昭和と時代が進んでいき、衣装や街並みが変わっていく様子も見ていて興味深く、長屋だけは変わらないようでも、やはり変わっていく。それに抗うように、男は走り続けるが、それも終わりがくる。諸行無常。

隣に住む噺家が、どこまでも優しく、男との掛け合いも楽しく、作品の安定剤となっていた。

洲崎パラダイスよりも、こちらが好みだった。
ザマス

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