救済P

ドラえもん のび太のワンニャン時空伝の救済Pのレビュー・感想・評価

3.6
ドラ映画25作目。

のぶ代ドラ最後の映画であり、そのため映像・映画技術は過去一クオリティが高い。

川で溺れていた子犬を助けたのび太は「イチ」と名付け家で飼うことにする。のび太の街では野良犬、猫が急増しており、裏山は動物たちで溢れかえっていた。のび太たちは野良犬猫が安心して暮らせる環境を提供するために、動物たちを3億年前の世界に連れていき、人手がなくても成長できるように「進化・退化光線銃」を残して現代へと帰っていった。翌日、時空のねじれの影響でイチたちを置いてきた時代から1000年後の世界に飛ばされる。そこでは、犬と猫によって文明社会が築かれていた。時を同じくして、地球には超巨大隕石が衝突しようとしていた…

ドラえもんたちが様々な時代を行き来するのはいつものことだが、ゲストキャラクターも様々な時代を行き来し、時々の時代に応じて姿を変えるという点で異色な作品。この設定は物語の鍵を握るものとなっている。

前述したように全体的に映像のクオリティが高い。島谷ひとみが歌う映画主題歌の『YUME日和』は個人的に全てののぶ代ドラ映画の中で最も美しく、その主題歌をゲストキャラクターのシャミ―が歌うライブシーンには気合が入っている。

映像のクオリティの高さは冒頭の不穏演出から既に見て取れる。二足歩行し言葉を話す謎の老犬がタイムマシンらしき装置に乗り込み、時空の乱れへと巻き込まれ、身体が子犬へ変化していく。
これから待ち受けている冒険がシリアスな空気感とともに予見される完成度の高い不穏演出となっている。

時空の乱れによって身体が変化するシーンはのび太たちにも見られる。のび太やジャイアンは赤子まで若返り、スネ夫は老人に、しずかは少女から女性へと変化する。成熟した映像技術があるからこそ出せる単発火力の高いシーンだ。

なんと言ってもボスの猛攻を躱しつつ車を爆走させるカーチェイスシーンは圧巻。意図的に設けられた見せ場で、映画館で観ていたらさぞ迫力があっただろう。のぶ代ドラ映画でこれほどまでに迫力のある見せ場は他に『翼の勇者たち』のイカロスレースを除いて類を見ない。

と、見てきたように映像表現は無類で文句のつけようもないのだがシナリオ自体は割としょうもなく、「ほら泣けよ」と言わんばかりの感動シーンが鼻につく。のび太が「うさぎとかめ」をイチに教えていたことを利用して無理矢理「うさぎとかめ」を歌いながらけんだまで敵に攻撃をするシーンはエモさを優先するあまり逆に寒い。イチとのび太の友情に裏付けされる感動シーンは最後まで「ドラ泣き」を意識した寒い展開を見せる。

加えて、『YUME日和』という圧倒的な主題歌を携えていながらエンドロールで視聴者応募のイラストを紹介してしまうので台無し。「映画のクオリティ」という観点から言って、視聴者の稚拙なイラストの紹介は控えてほしかった。

色々と文句を言ってきたが、それらを踏まえたとしても映像のクオリティが霞むことはない。圧倒的な脈動感とシャミ―ちゃんの可愛さを兼ね備えた『ワンニャン時空伝』はのぶ代ドラ映画の最後を飾るのに相応しい映画だった。
救済P

救済P