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西部の人のrollinのレビュー・感想・評価

西部の人(1958年製作の映画)
4.0
自分の町の学校教師を探す旅をしていた主人公リンクが、かつての自分の家族とも言える強盗団と運悪く再会し、ツケを払いカタを着ける物語。地元に帰った時に面倒臭いヤンキーの先輩とバッタリ出くわすあの感じです。

主にお色気や暴力描写の面でマカロニウエスタンへのブリッジとして語り継がれる名作。
これまでアンソニー・マン監督とタッグを組んできたジェームズ・スチュアートは同時期『めまい』に出演しており、親友のゲイリー・クーパーが主演でがんす。

文化的な世界から再び荒野へ。
美術や小道具の仕事の細かさ。守りようの無い鉄道マナー。
何より印象的なのは、主人公が銃をガンベルトごと鞄にしまってしまうシーン。この主人公の牙の抜かれっぷりとED感が後の危機を招くと共に、銃を取り戻すまでのタメを作り出し、ハリウッド西部劇〜マカロニを通しても中々斬新な堪え演出となっております。
ジュリー・ロンドンのおっぱいに関しては、出さないなら脱ぐな!でございます。

映画は劇中の台詞にもある通り、亡霊に憑かれているかの如く暗く重苦しい足取りを辿り、それは本作から3年後の61年に亡くなってしまうゲイリー・クーパーが既に病を発症していた影響もあるかもしれんけど、主に室内に於いての強盗団と主人公の会話劇の緊張感や虚しい余韻には独特の美学を感じます。脚本が『十二人の怒れる男』を書いたレジナルド・ローズというのも納得でがんす。

終盤の炭鉱町での全員コルトSAA(恐らく皆ほぼシビリアン)という銃撃戦は素晴らしく、近距離戦にならざるを得ないが故の間合いの詰め合いや、ひとつの画の中に隠れ合う二人を収めるカメラワーク(全編通して撮影レベル高し)等、動きにキレが出せないゲイリー・クーパーの状況を逆手に取った演出は見事!

主人公の育ての親であるドッグを演じたリー・J・コップのおしゃれな着こなしと、年老いてもまだやんちゃ自慢する絶望感。仮想的な親殺しの何とも言えない無常感。
しかし当初は野蛮で厳しい表情を見せていた荒野も、ラストにはその大いなる懐に主人公を包んで行くのでした。
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