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眠狂四郎 殺法帖の教授のレビュー・感想・評価

眠狂四郎 殺法帖(1963年製作の映画)
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市川雷蔵の「眠狂四郎」シリーズ一作目。
全体を通してご都合主義だなぁと鼻じらむところと、その割に面白いなぁと感じる物語的な構造があったり、そこはケレン味で処理するんだ?とばかりに唐突な荒唐無稽さを発揮したり(特に若山富三郎絡みのシーン)と短い尺の中で何かと忙しい。

手際という意味では圧倒的なスピード感で物語は一方通行ならびに直線的に進行していく。
そのためにわかりづらさはあまりない。
ただ、日本映画にありがちな唐突さで時々混乱が起きるのは、キャラクターや設定を画面やディテールで描写せずに、台詞で説明してしまうところにあり、この手の大映時代劇にはよく見られる。

一方で腐敗した権力としての加賀藩と、そこに良いように使われた腹いせに復讐しようとする「銭屋」という闇社会のドス黒い対立の中で、翻弄される中村玉緒の「女性」の哀れさと、そこに「呪われた性」で巻き込まれる主人公、市川雷蔵演じる眠狂四郎の「モラルや正義のない」関係性が面白い。

黒澤明「用心棒」などの影響や「007」的なスパイアクション的な匂いも感じる。
時折見せる西部劇的な画面構成や立ち回りなど映像的にも、時々はワクワクするショットが見られるため、面白い。
特に市川雷蔵は殺陣のキレはなくても立ち姿がカッコよくて最高ではある。
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