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道のなのネタバレレビュー・内容・結末

(1954年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

不朽の名作と言われる今作品、いつか観ようと思っていたのですが先延ばしにし続けていました。先日川村元気さんの『四月になれば彼女は』という小説を読みました。その中でいくつか映画が出てくるのですが、好きな映画ばかりで、この『道』だけ観たことがなかったので、今回鑑賞することにしました。

めっっっちゃ長いレビューになりそうです。完璧に見たことある人向けです。


あくまで私が思った感想なのですが、ザンパノは不器用すぎる程に不器用でぶっきらぼうです。人を大切に思ったり、誰かのために何かをしたりすることの出来ない、簡単な言い方をすれば自分勝手で悪い男です。彼の芸にも表れていますが、本当に力任せです。ザンパノと長い付き合いになる綱渡りのイルは訳もなくただからかいたくなる的なことを言っていましたが、よく分かります。

一方ジェルソミーナと言えば純粋そのもの。従順で、まるで子供です。

ザンパノはジェルソミーナに暴力を奮ったり、自分が女の人と楽しむために真夜中の街にジェルソミーナを置いていったり、酷いことばかりします。ザンパノと一緒にいて、ジェルソミーナが幸せになれるわけがない。






DVDの特典映像に、映画評論家(?)の解説が入っていて、その人はイルのことを神様だと言っていました。それを聞いて「はぁ!?!?どこが!?!?むしろ悪魔やん!!!!」と最初全然納得がいきませんでした。


だってイルはジェルソミーナに頭が悪い、器量も悪い、何も出来ないと散々貶して、その後ザンパノは君のことが好きなんじゃないかと、ザンパノと離れられない様にした張本人じゃないですか!


小さな石ころも何かの役に立つ
それが何の役に立つかは神様にしか分からない


的なニュアンスのことを言っていましたが、その神様のこと?いやどっちにしろ納得いかない!!


イルがそんなこと言わなければジェルソミーナは誘われていたサーカスの一団についていったかもしれないのに。むしろイルが連れて行ったら良いのに!


と思って母に散々文句をつけてその件について母と一緒に熟考しました。

イルは綱渡りをしていつ死ぬか分からない人生を送っているから、もしイルについていったとしてもジェルソミーナは1人になってしまうかもしれない。なるほど。

イルは死と隣り合わせで生きているから、きっとそういう未来のことを全部分かっていて、ジェルソミーナにそう言ったんじゃないか。イルから曲を教えもらったジェルソミーナは、子供の様に純粋で綺麗な心を持っているからとても素敵な演奏をすることが出来る。なるほど。

さすがお母様、と思いイル=神様の表現をあっさり納得してしまいました。

頼る相手がザンパノしかいないジェルソミーナはそれがどんな形であったとしてもザンパノに愛情を持っていただろうし、誰かから必要とされたいと望んでいたジェルソミーナはきっとイルの言葉に希望を持ったと思います。


そういうことを考えるとジェルソミーナが可哀想すぎて辛くなります。



ラストシーンで泣き叫ぶザンパノに「今更気づいても遅いねん!」と余計腹が立って後味最悪です(笑)


『四月になれば彼女は』で、そのシーンについて獣医の彼女が精神科医の彼氏(主人公)に「ザンパノはジェルソミーナを思ってた泣いたんじゃないよね。手に入らないものがひたすらに愛おしかったんだよね」的なことを言います。


ん?どういうこと…?

とそのことについても熟考してみました。



人を思いやれない、大切に出来ないザンパノが、ジェルソミーナが死んだことを知って思った以上に衝撃を受け、衝撃を受けたことに動揺し、自分にそんなにも大切に思える何かがあって、それがもう手に入らないものである。そしてそれは手に入らないからこそ尊い。そんな気持ちから泣いているんじゃないか、と解釈したんじゃないかと解釈しました。まどろっこしい(笑)


この意見について母は全然納得してくれませんでした。ちなみに自分で言っておきながら私も何言ってるねん状態です(笑)


この映画から何を感じれば良いのかいまいち分かりませんでした。


きっと手に入らなくなったものを身勝手に愛しく思って特別うつくしく感じたりする、男性から評価の高い映画なんじゃないかと勝手に予想してます。元カノのことを神格化してる様な方、たまにいますよね。偏見すぎますごめんなさい(笑)


私には終始辛くて、好きになれそうにない映画です。こーんな長いレビューに最後まで付き合って下さった方がいれば全力で手を握ってお礼を言いたいです。ありがとうございます!
な