矢吹

道の矢吹のレビュー・感想・評価

(1954年製作の映画)
4.3
ジェルソミーナ!
私は美人でもない、料理もできない。
初めて働いて、
初めて2人になって、
初めて裏切られて、
初めて信じて、
初めて1人になることを知る。
存在が本当に儚くて、可愛いくて、可愛そう。
なんか文句あるかっていう男と
道行く子供にもおどけて見せる彼女。
見られることと見せることの対比によって
彼女が仕事にはまっていく過程も綺麗だし。
口数は少ないが感情が豊か。
クソ丁寧。
どんどん自信がついていく様も
夫婦と呼ばれることに喜びを感じる様も
涙を拭きながら、彼を見つめる夜も
1人で待つ不安も
なんの役にも立たないものなんてないと教えられた安堵も
生きることとの様々な出会いに対する
リアクションのすべてが愛おしい。
私がいないとひとりぼっち。
必要とされているとわかった時。
焼いてやるという。
必要とされてないと感じる時。
黙ってついていく。
彼女の純粋さと優しさと強さと弱さのすべてが愛おしい。

Strada 。
旅を通しての道でもあり、
それぞれの選択肢としての道でもある。
ついでに
大道芸人。道化師としての道もあるけど
これに関してはおどけが語源とされてるし、
ぜんぜん本筋とは関係ない。とはいえ
道の奇妙なつながりに興奮を感じずにはいられない。
ロードムービー。

一つの音楽の広がりがえげつない。
なぜその音を知っているのか、
観客にとってもどこか懐かしいこの音は
オープニングにしれっと流れてたのよね。
ノスタルジーの二度づけ、三度づけ。

私が死んだら悲しい?

物語を動かすザンパノの旧友もすげえいい。
理由はないけど、からかいたくなるって言うキャラクターがなによりも素晴らしい。

鋼鉄の肺を持つ男のバカバカしさと
客を盛り上げる前口上。
これが彼女の不在を際立たせる装置にもなる。
それでは太鼓を鳴らしてくださいって言わないのね。
どうぞって。ジェルソミーナさん。
そして、切なすぎるラストが素晴らしいね。
あの質問に対する答えを彼女に伝えることはできなかった。
俺が悔しいわ。

生半可な勢いで見たことを後悔した。
こういうことがあるからな。
笑わせられない子供の存在とか。
時計の針のように馬パッカとか。
また時間を使ってしっかり見ますよ。
矢吹

矢吹