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耳をすませばのおーたむのレビュー・感想・評価

耳をすませば(1995年製作の映画)
4.3
宮崎駿監督のジブリを制覇後、ちょっとした寄り道のつもりで再鑑賞。
初見では見るのが気恥ずかしく、その後一時期は、素直に楽しめるようになりましたが、今回の鑑賞では、なんだかまた恥ずかしくなってしまいました。
青春は眩しい…(笑)

最後の鑑賞からだいぶ間が空いていたので、細部はかなり忘れていたんですが、全編恋愛ってわけじゃないんですね。
特に後半は、進路や将来について真剣に悩み、自分の可能性を試そうとしてもがくヒロインの姿が描かれていて、こういう話だったっけと、少々驚きました。
考えてみれば、多くの人にとっては、義務教育が終わるタイミングこそが、初めて自分で進路を選択する機会。
キラキラと輝く青春をおくりつつ、こういった現実問題にも真正面から向き合う雫は、けっこうしっかりした中学生だよなと、今回初めて思いました。
芝居がかった一人言の多い女の子だな、とか、嫌な見方もしちゃいましたが。

そうした中学生日記的なストーリーが生む現実性と、丘の上の古道具屋を拠点として放たれるファンタジー性の取り合わせが、個人的に好きなポイントでした。
地球屋というネーミング、その主である西老人、からくり時計、ムーンとバロン、バイオリン工房、カントリーロードのセッションなどの、小道具や舞台、場面は、現実と地続きのファンタジーを感じさせてくれて、わくわくします。
バロンの存在や、西老人の昔話などに特徴的ですが、本作には、見ている側のイマジネーションを刺激するような要素が多く配置してあり、それが、比較的現実的で小さな物語であるはずの本作に、奥行きをもたらしていたように思います。
面白かったですね。
単なる青春物語、恋愛物語という以上のものを感じられて、よかったです。

しかし、本作を見るたび、近藤喜文監督がご存命だったら、その後にどんな作品を作っただろうなと思ってしまいます。
二人の巨匠とはまた違った傑作を見せてくれてたかもしれないと思うと…。
物事に“たら・れば”はないのだけれど、そう思わずにはいられないぐらい、本作は良い作品だと思います。
初々しさが微笑ましく、真っ直ぐさが清々しい、後味さわやかな逸品でした。
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