本日3月10日は歌舞伎俳優・中村錦之助改め、萬屋錦之介のちょうど没後20年目に当たります。
本作は監督デビューして間もない頃の山下耕作と初めてタッグを組んだ、錦之助の代表作に挙げられる股旅映画であり、
後の山下が任侠映画で才能を開花させた原点とも云える作品。
ちなみに助監督には鈴木則文が担当しており、
生け垣の花・木槿を使った演出等、鈴木の後の代表作「緋牡丹博徒」にも通ずるアイコンを彷彿とさせています。
錦之助が情感たっぷりに魅せる演技は圧巻であり、前半と後半の人相の変わり様も表現の幅をこれでもかと見せつける要。
「抜いたか…」はもう鳥肌モンっす。
数々の美観ショットと構図の秀逸さが光る本作ですが、特に見所なのは竹藪で繰り広げられる迫力の喧嘩シーン。
作り込まれた壮大な雑木林セットの中でザアザアに雨を降らし、計算し尽くされたカメラワークには終始感嘆です。
十朱幸代は正直ブーちゃんですが、ラストの生け垣でのやりとりは、やはり永遠の名シーン。
「お小夜さん…このシャバにゃあ、悲しいこと、つれぇことが沢山ある。だが、忘れるこったぁ。忘れて日が暮れりゃあ明日になる。あぁ、明日も天気か…」
こんな格好いい台詞を吐いていいのは錦之助と、松竹で昭和股旅劇を体現した寅さんくらいのもんです。