このレビューはネタバレを含みます
何気なく観ているうち、おや、これは凄いぞ、と感じ出す、幸せな経験をしました。
被災地が舞台となると、悲しさが胸を刺して、私は観るのに少し気合いが要るが、それでもこれは観て良かった。
それにこの作品は、震災の傷跡をそこまで前面に押し出すわけではなく、あくまで舞台であるということに過ぎないし、
震災について既に語り尽くされた意見をなぞるようなことはしない。
三姉妹は、ハードな家庭に育ち、それもやがて崩壊、姉妹たちも家を出て全員バラバラに暮らしてきた。
その三人が、被災後の自宅に偶然集まり、まずは当然喧嘩する。特に長女は理屈が通じない。
ギリギリセーフ、というよりは、結構大幅にアウトな彼女たちである。
築いた新しい家庭も崩壊、実は死のうとしてやってきた次女も、ボロボロである。
三女は一人地元に残り、このボロ家を守りながら、気ままに生きる姉たちに、長年悔しい思いを募らせてきた。
一方長女はドル札を焚き火にくべて高笑いしている。
普通なら端折りたくなる間を必要なだけじっくり保っている。
三人黙ってもぐもぐとおにぎりを食べるシーンなどは、普通数秒しか映さないものではないだろうか。
省略が少ないのでじっくり噛み締めながら観ることができる。
だから、はやく話の本筋を掴みたいと急いで観ようとすると、この作品はあまり面白くないと思う。
時間のある時に、じっくり観てこその作品だ。