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ア・ホーマンスのjonajonaのレビュー・感想・評価

ア・ホーマンス(1986年製作の映画)
3.5

ヤクザ組織間の抗争が始まりそうな一触即発状態のネオン街に、
『風』と呼ばれる正体不明の男が現れる。
過去の記憶がない男。
武闘派ヤクザではぐれ者の山崎は、この男に奇妙な親近感を覚えるが
街には彼の出現を機に抗争の嵐が〜…

○いいとこ
・ケレン味あふれるカメラワーク。

・夜の濡れたネオン街の取り方が美しい。
猥雑だけどどことなく非現実感がある。
部屋の中を取る時も、向かいのビルの部屋から眺めたような俯瞰になっていたり、ネオン街も脇道から覗くように撮っていたりと、作り込まれたセットの非現実感を中和するように目線がリアリティ持ってる。

・セリフが最小限に抑制されていて謎めいた雰囲気に拍車をかけてる。『風』こと松田優作なんてほぼ喋らない。動じない。
ヤクザ映画らしからぬ上品さ。

・酒瓶で殴られてもびくともしないでホール仕事を続けるなど松田優作のキャラが、謎めいていて引き込まれる。

・ブレードランナーのような夜を舞台とした世界作りと、重低音の音楽がセクシー。
青白い光を基調にした赤・緑ネオンの暗闇は今見ても美しい色彩設計だと思う。

・ヤクザ総並びで闊歩するシーンの無類のカッコよさ。

・ヤンキーに絡まれたシーンでの松田優作のバストアップにフレームを固定したアクションシーン。ようやく動いた!

・高い声でネチネチしゃべるインテリア新組長の気持ち悪さ

・ラストの襲撃〜気味の悪い皆殺しシーンのカメラワーク

○よくないとこ
・『風』に相対する石橋凌演じる山崎のキャラが見え辛い。あらすじ読んでから見たから分かるけど、組の対立があって組織の中で孤立した存在ってことが、冒頭30分ころでは確認できない。

・『虐殺器官』とか、マクガフィン的なものに振り回される話が大好きなのであらすじを読んで興奮したが、一般的に『面白い』物語かといえば少し工夫が足りない。
少なくとも、冒頭30分は退屈。

・ようやく動いたと思ったら案外静と動の緩急もなかった風へのがっかり。

松田優作だかもってるようなもので、『あいつは普通じゃないんだ』と言われたラストまで全く活動がないのも…うむ。

○構成
ー15分ー
風がバイクでやってくる。このOPシーンカッコいい。山崎が組織と揉める。ホームレスをしてる風のただならぬ雰囲気を見て抗争を予感する。

ー30分ー
山崎がスパイと見て風を尋問しようとするが、全く動じない。ヤクザも怖気付く彼の胆力に共感を覚え、山崎は風俗店のホール仕事を紹介してやる。

ー45分ー
殴られても動じない。靴を脱がずに畳に上がる。無口なくせに女は抱く。
山崎がシンパシーを感じるように風も山崎に感じるものがある。『おじさん』『山崎さん』と呼び合う仲になる。
敵組織に組長が撃たれ、山崎は鉄砲玉を命じられる。風には指紋がなかった。

ー60分ー
色々あって風邪に感化された山崎は風を友人として逃して、自分も算段だらけの鉄砲玉を拒絶。結果追われる身となり美人妻が犯される。新組長の気持ち悪さがほんといい味出してる。

ー90分ー
山崎がお家に帰ると撃たれる。怒り狂った松田優作が犯人たちを追いかけ惨殺。
(ここの演出は神がかってる)
なんと彼の正体は…笑

感想)
ラストになんじゃそりゃ驚かされた。笑
全体的なムードはきらいじゃない…
ラストの結末が素っ頓狂すぎてムードには全くそぐわないと思う。残念。
カメラワークはほんとよかった。
昔の日本の街並みが見れるのもよし。

起承転結はありきたりでシンプル。
映像の美しさと謎の男の一点張りではさすがに最後まで見るのは退屈した。

テーマはわからないけどヒロイズムと暴力がキザっぽい。エンタメとしては盛り上がりに欠けてダメ。
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