綾

恋におちたシェイクスピアの綾のレビュー・感想・評価

恋におちたシェイクスピア(1998年製作の映画)
5.0
午前十時の映画祭にて。

ロマンチックといえば、わたしはこの映画を思い出す。シェイクスピアとヴァイオラのロマンスはもちろん、十六世紀イギリスの雰囲気や、文学や舞台へのたっぷりの愛が、本当に大好き。胸がいっぱいになる。

初めて観たのも午前十時の映画祭で、記録をふり返ったらもう七年前のことらしい(!)。こうしてまた映画館で観られて、本当に嬉しかったなあ。ありがとう。

やっぱりわたしは、物語を生みだす人の物語が大好き。本作はそれ自体フィクションだとしても。優れた絵画には現実以上の真実が宿る、という言葉はどこで聞いたんやっけ。文学や物語にも、ときに現実以上の真実が込められていると思う。

(だけど、物語以上の現実を生きたいっていうヴァイオラの気持ちも、すごくわかるな)

どこかで、人は死を怖れるから永遠の命として物語を残そうとする、と読んだことがある。別のどこかで、人は物語や虚構の力によってここまで進化したとも読んだ。
映画館があり、文学が親しまれ、舞台が広く愛される今の時代を生きられて、本当に幸せ。有り難い。物語に入り込み、実在しない登場人物たちのために泣いたり笑ったりできる人間が、わたしは大好き。そうした創造力・想像力が、人間のエゴや傲慢さと裏表だとしても。

作者や作品に関わった人々が亡くなった後も、物語は永遠に生き続ける。物語のなかで、人は永遠の時を生きる。それはやがて神話になる…… それ以上にロマンチックなことが、あるんやろうか。
綾