メランクさん

ウィッカーマンのメランクさんのレビュー・感想・評価

ウィッカーマン(1973年製作の映画)
5.0
ミッドサマーのリファレンスとして知ったけど、
だいぶ違っててすんげーよかった。
もうメインヴィジュアルで出ちゃってるけど、
クライマックスで知らずにウィッカーマンどーんて出てきたら
それはそれは度肝抜かれただろうなぁ。

まず少女の失踪を探るというミステリーものであり、
それがどんでん返しで終わるという秀逸さ。
いかにも怪しげな島民たちが見事だし、
ウィッカーマンも含めた装飾が実に凝ってる。
あまりにも常軌を逸した怪しさだからこそ
主人公じゃなくてもミスリードされてるのに気づけない。
本当に完成度が高くてびっくりする。

しかも先日見た「星の子」とも重なる部分があり、
結局、主人公のマウイーの敬虔さというのが
特にクリスチャンでもない私からすると押し付けがましく、
警察官であるというのが象徴するように
権威主義的で非常に感じが悪く見える。
もちろん少女を探そうとしているんだけれど、
学校のシーンで見せる態度などからも
独善性が引き立って感じられた。

英国を「キリスト教の国」とするセリフがどのような意味を持つのかははかりかねるけれど、
少なくとも敬虔さが皮肉られてることは間違いなく、
乾皮なきまで敗北する姿に爽快さがある。
我々が当然とする価値観が相対化された世界では、
いくらその正統性を主張しても意味などない。
この時代に至ってすごく重要なメッセージだと感じる。