えちぜん

息子の部屋のえちぜんのレビュー・感想・評価

息子の部屋(2001年製作の映画)
3.7
家族を失った、喪失と再生。

自分も子どもの頃に弟を亡くしている。幼いながらに色々と考えたもので、なぜ自分ではなかったのか?弟が生きていたら、また自分も違った大人になっていたのだろうか?何より1番辛かったのは両親だろうが、この経験が自分の人生に与えた影響は少なくない。

あだち充の「タッチ」は、和也が亡くなるところの描写がない。でも現実はそう。「息子の部屋」も同じで、家族の訃報は前置きなしに唐突にやってくるものだから。

父は泣き、人にあたり、がむしゃらに走り出し、夜の遊園地で暴走をし、時に心ここに在らずといった表情を見せ、生前の息子のことを微細に追及し、過去の「たられば」に苛まれ、とことん自責の念にかられる。その演出の積み重ねがリアルだなぁ…また息子のアンドレアが、純朴だけど優しい子で、将来の期待をせずにはいられないキャラだから…

彼女さんの存在が、家族3人の再生への足がかりとなる。人は人と関わることで、お互いのなかに何かを残していく。彼女のなかに息子がまだ生きていることを感じたのかも。

三人がバラバラに歩いていく後ろ姿が、それぞれ道は違うけれど進むべき道を見つけたようで、最高のワンシーン!(๑˃̵ᴗ˂̵)
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