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アーサーとミニモイの不思議な国のarchのレビュー・感想・評価

5.0
リュック・ベッソン最高傑作であり、フレディ・ハイモアのベストアクトであり、神木隆之介の声優業における最高到達点。

幼い頃から何回も見た作品、改めて観ても脚本が巧妙で観ていて気持ちがいい。
原作からそうなのだろうが、尺的にもサイズ的にもミニ版『指輪物語』で、行きて帰りし物語ではある。ただ最終的に巨大化(人間化)してしっかり暴力的に解決するのが、清々しいし、「小さき者=純粋」、ひいては「弱者=純粋」みたいな価値観の一新になっているようで惹かれる。

あとこの映画、特殊なのがロケーションを二度遣いする癖がある。川から滝に落下する定番のアクションシーンを同じ川で、二回やる映画は少ない。それがちゃんと天丼になっているので面白い。(川でロープがないとか言いながら、その後平気でロープを使ってベットメイキングしてることに今になって気づいた)
他にも、同じロケーションを二度使う方法をよく使っていて(ちょっと思い出せないが)、1つの特徴であった。
多分それは人間視点とミニモイ視点で、同じ景色でも違って見えるというのが、1つの面白いところだったということに呼応する。特に用水路がミニモイにとっては危険なものとなりうるという話では、本作が技術は使いようになっては、善悪どちらにもなりうるという一貫したテーマを浮き彫りにする。恐らく、白人酋長的な話に属する本作において、技術や文化を持ち込むことによって、生態系を破壊しうる問題に言及していることは興味深いと思っている。

あとこの映画、「世界は正反対の存在を生み出してバランスを取っている。」という話をおばあちゃんがするのだが、いい考え方だなと改めて思う。全体主義的に全が一となるのではなく、あなたと正反対の考え方や見た目の人間がどこかにいて、だから世界は成り立っている、いやだからこそ素晴らしいという考えに寛容であればマシな世界になる気がするのだ。
ラスト、ミニモイ同士ではなくあくまで人間とミニモイの恋の形として、締めくくられるカットが、なわだかその事を全肯定するようなシーンで胸を締め付けられるのだ。

おばあちゃんが最後満杯な食卓を囲って幸せそうなのでOKです。
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