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恋文のあんずのレビュー・感想・評価

恋文(1985年製作の映画)
3.7
昔、渡部篤郎×水野美紀×和久井映見のドラマを観ていた。鎌倉がロケ地で、当時、鎌倉に住んでいた私には思い出深いドラマ。夫が妻と子どもを置いて家を出て、余命いくばくもない元恋人の看護をするという、かなりブッ飛んだ内容なのに、ドロドロはしていない不思議な作品だった。原作は直木賞受賞作で、ドラマを観た後に読み、ドラマより更に爽やかだった。ドラマ、原作とも映画の印象は異なり、結末もドラマとは異なる(原作の結末は思い出せず、また読みたくなった)。

萩原健一のダメなんだけど憎めない、女性にモテる感じは渡部篤郎と通じるものがあった。妻役の倍賞美津子は健康的な水野美紀とはかなり違う、セクシーで気だるい雰囲気なのに、突然感情を爆発させる情熱的な面もある人だった。共感は出来ないけれど、こういう人がいるんじゃないかと思わせる説得力があり、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ、数々の賞に輝いているのも納得。元恋人は高橋惠子が演じ、和久井映見と同様に清楚で控えめなのに、突然感情的になり危険な行動に出るので怖かった。小林薫や橋爪功も出ていた、みんな若い!

最大の見所は、妻と元恋人が共謀して夫に秘密を持つことで仲良くなるガールフッド的な部分と、題名の「恋文」とは何を指すのかが分かるシーンだと思う。知っているはずなのに、ゾクッとした。

切符を買う改札や10円玉を入れる公衆電話、ファッションやヘアスタイル、昭和だからなのかは分からないけれど、よく分からないカットも入っていて、それらを観るのも楽しかった。
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