月うさぎ

南極料理人の月うさぎのレビュー・感想・評価

南極料理人(2009年製作の映画)
2.8
私「しらせ」に乗船した事があるんですよ!

…なんて大げさですね。南極に行った訳ではもちろん無くて、横須賀に帰って来ていた「しらせ」を見学させてもらっただけです。
でも、この船が南極に行くんだな〜と、ちょっと感動しました。

第38次南極観測隊ドームふじ基地越冬隊の料理番として派遣された海上保安官の西村。家族を置いての単身赴任生活は1年を超える長期に渡る過酷な任務だ。

ドームふじ観測拠点(ドーム基地)は、昭和基地から1000キロも離れた内陸部で、しかも富士山より高い標高3800メートルの場所。平均気温マイナス57℃、最低気温はマイナス80℃近くまで下がるという。ペンギンもアザラシも観られない、どころでは無く、あらゆるものが凍結し細菌さえも生存できない地の果て。どこにも行けないという絶望的閉塞感たるや、さぞ辛い事でしょう。
そんな環境で生活するおっさんたちの合宿を覗いてみた。という映画なので、なんともたわいなく、取り止めのない、アホっぽさに満ち溢れた緩い雰囲気に終始する。確かにこんな環境を乗り切るにはバカになるしかないというのはなんとなくわかる。
このダラダラ感を暖かくて楽しいと感じるか、緩急が無くてつまらないと感じるかでこの映画の好悪が別れると思うのです。
おまけに監督が主人公の西村を「料理で語る男」に設定してしまったため、あの弁舌が魅力の堺雅人が、無口で言いたい事を何も口にしないで切ない表情ばかりしている。
こっちはもどかしくて仕方ない(⌒-⌒; )

肝心のお料理ですが、これがそれ程そそられなかったのです。
南極ならではのエピソードはあるものの、肉のブロックを焼くのに、オイルをかけて直接火炙りにするとか、楽しげだったけれど美味しくなさそう。切り分けて食べるシーンを観て、真ん中焼けてないんでは?味がないのでは?と気になってしまいました。
伊勢海老のジャンボ海老フライも、インパクトはありましたが、料理を食べるシーンがクローズアップにならないんです。そして、とっくに冷めてるんじゃないのか?と心配になってしまうくらい、食べる前、のんびりしてるんですよ。
「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」(アメリカ)の料理のシーンはスピード感も映像も実に素晴らしいですよ。
包丁捌きも、料理の見せ方も、肉の断面のジューシーで美しいことも、食べてる人の美味しい顔も。

せっかく「料理人」が主人公なのですから、もっと料理を中心にしたストーリーをガンとやるべきでしょう。キャラクターに踏み込んでないから群像劇にもなってないぞ。
日本に帰ってから遊園地の売店で買ったソースベタベタのハンバーガーを食べて「うまいっ!」って終わり方は無いんじゃないか?実際のところジャンクなものが恋しかったり美味しく感じる事はあるけれど、そういう話じゃないでしょ。料理で人を笑顔にできるんだよというテーマでしょう?

原作がユーモアエッセイなので、映画よりもドラマ向きなのでは?と思ったら、とっくにテレ東の深夜ドラマでやってたんですね。
恐らくそちらの方が原作に近いのでは?

わざわざ映画化するくらいなので本当に南極の端っこくらいには行ったのか?!と、思うでしょう?
実はロケ地は冬の網走湖や能取岬だそうだ。北北海道でも十分南極感が出るってことなの?まず寒い事は間違いない。でもミッド・ウインターの太陽のいない日々の暗さは体験しないとわからないだろうな。

別に…飯食う為に南極に来たわけじゃないからさ

美味しいもの食べると元気が出るでしょ
月うさぎ

月うさぎ