松井の天井直撃ホームラン

パーマネント野ばらの松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

パーマネント野ばら(2010年製作の映画)
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↓のレビューは。今はもうなくなってしまった映画レビューサイトに、鑑賞直後に投稿したレビューを。こちらのサイトに移行する際に、以前のアカウントにて投稿したレビューになります。

☆☆☆★★★

〝 安易なはたき込みに頼る力士は成長しない 〃

西原理恵子による原作は未見。どうやら設定等は色々と変えているらしい。

娯楽が何も無い町。人々の楽しみは男女のはたき込み、或いは誰と誰がくっ付いた、もしくは別れたの噂話だけ。特に盛り上がるのは“あのチ○コ”に“その○ン○”の話だ!パンチパーマ軍団が強烈過ぎる(笑)

女の子ものがたりを彷彿とさせる、菅野美穂:小池栄子:池脇千鶴の3人の仲良し。もしも『女の子…』の3人が地元に住み続けていたら…。

過激な愛情の小池。
痛すぎる男運の池脇。
そして、純真な感情を持ち続ける菅野。
3人3様な恋愛事情を互いに持ち、他の2人が絶えず気遣いながら、日々の生活をしている。この友情がとても良かった。
でも、この3人が後にパンチ軍団になるのか…とゆう怖さも同時に(笑)
いつの日にか言うんだろうなぁ〜。「あの時のチ○コ」や、「その時の○ン○」…って(汗)

その他の住民達の枝葉のエピソードも実に強烈。パンチ軍団のおばちゃんのはたき込み方(笑)や、ゴミ屋敷婆さんのブラックな恋愛。
また小池栄子の父親が、家族を思っての過激な行動等は、亭主に対する小池の過剰な愛情と重なり合い、この親にしてこの子有り…と、思わせた。
因みに私は、○線を切って生計を建てていた、と語っていた人を実際に知っているので、「本当だったんだ!」と観ていて苦笑いをしてしまった。
本人曰わく「生きるのに必死だったから、今考えると、よく死ななかったと思う」と言っていたが…。

普通じゃない人々が登場する中にあって、ごく普通の女性をごく普通に演じる菅野美穂。久し振りの映画出演だが、巧い。いや、本当に巧かった。
普通じゃない人を演じるよりも、普通の人を何気なく演じる方が、格段に難しいと思うので。この作品の彼女は素晴らしかったと思う。

そんな普通の出戻り娘を傍で見守る夏木マリとの母娘関係もまた良かった。その昔反抗的な娘の眼を警戒していたこの母親。今は数多くの町で起こる出来事にアンテナを張り巡らし、言葉少ないながらも静かに見守っているこの母親。夏木マリの演技もまた素晴らしかった。
母親のちょっとした変化も見逃さず、大好きなパパの事を忘れる度に反抗的な眼を向ける娘のももちやん。
この親子3代に渡る、隠れた愛憎劇を忍ばせているのも見事でした。

だが、それに比べると一見して軽そうに見えた江口洋介との関係でしたが…。
それまでの菅野美穂の演技が、実に用意周到だっただけに、最後の展開には意表を突かれた思いでした。

「あんたほっとくとどっかに行っちゃいそうだもんな!」

この言葉には、そんな彼女の危うい深層心理の意味が有ったのか…と。
そんな彼女のちょっとした心の変化を、見逃がすまいとする、女同士の友情と母親の愛情は、とても秀逸な物語でした。

でも、やったんだなぁ自分1人で…。

あの帯クルクル(爆)

(2010年6月2日ヒューマントラストシネマ有楽町2丁目/スクリーン1)