もっちゃん

初恋のきた道のもっちゃんのレビュー・感想・評価

初恋のきた道(1999年製作の映画)
3.6
中国山間部の淡い恋愛を描いたコテコテのラブストーリー。随所随所でツボを押さえてるから、普通に恋愛ものとして楽しめる。

50、60年代ごろの中国山間地帯。広大な山々が並び、四季を巡りながらいろんな表情を見せる風景が美しい。引きのショットで美しい風景をバックに展開される物語はどこを切り取っても一つの絵画のように見える。

おさげの、いかにも田舎者然とした恰好をしているチャン・ツィイーは観客の心に響いてくるのだろう。性別役割分業によって力仕事に出ている男性たちのために健気にご飯を作り、尽くしている様子は当時の時代背景としては当然の光景である。その健気さ、純情さが観客の琴線に触れる。

そして中国ではお決まりの「文革で男女の仲が引き裂かれる」という王道パターン。個人的には王道すぎるため、ストーリーには乗れず逆に頑張って走るが、もうちょっとのところでこけてしまうチャン・ツィイーに同情というよりも嘲笑するような感覚で見ていた。

テクニック的なところで言えば、冒頭と終盤で現代の話になるとモノクロの画面に変化する。通常、現在→カラー、過去→モノクロというイメージがあるが、それを逆手に取り、反転させたのは演出としては素晴らしい。色を付与された輝かしい過去と色を失った喪失感溢れる現在という対比はこの演出法でより伝わるものがある。