よねっきー

タクシードライバーのよねっきーのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
4.6
劇場で隣に座ったオッサンの匂いが強烈でさ、加齢臭とタバコとジャンクフードの混ざった匂いを女物の香水とミントタブレットで誤魔化そうとしてるような感じなの。例えるならそう、クソみてえな街の匂いだったの。もはや4DXだったわ。娼婦とケダモノが行き交う湿った街の匂いで頭痛がした。こんなリアルにトラヴィスに感情移入できると思ってなかったので最高の経験でした!オッサンの体から刺激臭を洗い流す雨はいつ降るんですか?

他の方のレビューをいくつか読んでたらはっきりと分かることだけど、世界には2種類の人間がいる。トラヴィスに共感できる人間と、できない人間だ。前者にとってその区別は「賢者」と「愚者」であり、後者にとってその区別は「狂人」と「一般人」である。互いが互いを見下しあってるわけだ。

かく言う俺はトラヴィスにめちゃくちゃ共感できる人間です。彼がベトナム帰還兵であることってそんなに重要じゃないんじゃない?俺にはもっと普遍的な映画に思えたよ。戦争を知らないトラヴィスが現代社会に沢山いると思うよ。

トラヴィスに共感できなかった人は、簡単に共感できる方法があるからお勧めします。Twitterを覗いてみれば良い。たった140字の文章も正しく読めない猿たちが毎日議論ごっこをしてるから。国会中継を見れば良い。議員のコスプレをした小学生たちが毎日喧嘩してるから。どんなに腹が立っても、そこに参加して戦おうなんて思えない。マトモに戦おうなんて無理さ。彼らを洗い流してくれる雨を待つことしか、俺らにはできないの。

永遠に来ない雨を待つ俺らの気持ちはいつしか爆弾になる。みんな爆弾を胸に抱えているんです。俺も、あなたも、トラヴィスも、スコセッシも。

誰だって腹立つ相手に一発カマしたいはずだ。トラヴィスと同じように、鏡の前で、銃を構えて、嫌いなやつの頭をカッコよくブッ放す妄想をする筈だ。え、俺だけですか?

トラヴィスは鏡の前の妄想を、目の前の現実にした。彼は胸の爆弾を爆発させるのに十分なほど強かった。同時に、それを爆発させずにはいられないほど弱かったのだ。スコセッシは、自分の爆弾を自分の代わりにトラヴィスに爆発させたんだ。「芸術は爆発だ」なんつってね。違うか。
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