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過去のない男のcyphのレビュー・感想・評価

過去のない男(2002年製作の映画)
4.7
特集『愛すべきアキ・カウリスマキ』35mmフィルム上映にて鑑賞 そうだこんな風に大好きなんだった、とじんわり胸がいっぱいになる 前の住民が凍死して空き家になったボロボロのコンテナに電線引いて捨てられてたジュークボックス修理して置いたり、家の前の土地掘り起こして芋を植えたり、無料でもらったお湯にこっそりマッチの空き箱に入れて持ち込んだティーバッグ入れたり 「愛してやってくれ 自分を愛するように」という終盤の台詞がぴたりと嵌まる、自分を自然に愛することができる男の良さで満ち満ちてる 「荷造りを手伝ってくれ」「荷物なんてないわ」「だからだ 一緒に座っていてくれ」なんて別れ際の恋人のやり取りとして満点だ

お決まりの三人組の暴漢もトランク漁って出てきたラジカセで音楽かけるし、銀行強盗のおじさんも凍結口座に入ってる分のお金きっちりしか渡さないよう念押しするし、行いが倫理的であるかどうかと別の尺度で登場人物全員の所作の美しさ(あるいは粋さ)がずっと気持ちいい 浮浪者となった主人公が正装して見違えたり、救世軍の職員たちが制服のままロックバンドとして出世していったりといった定番の楽しさもいい カティ・オウティネンの気高さと微笑みのバランスも本作がちょうどいい 何度観てもずっと味がする良作


2020.4.18 DVDにて鑑賞
安定のカウリスマキ こんなときこそ観たい 暴力すら予定調和で微笑ましい 犬と好意を向けてる異性と食卓を囲むのいいな カウリスマキの不器用な男の考えるデートはほんとうにほんとうに最高なんだ 素人バンドがどんどんファンを増やしながらライブをしていくのもレニングラードみあってよかった 音楽をいつでもあどけなく好むきもち 別れ際に一切の余韻なくざって背を向け合う潔さも見習いたい あと食堂車でsake飲みながらsushi食べたい
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