マーくんパパ

長江哀歌(ちょうこうエレジー)のマーくんパパのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

長江中流に建設中の中国政府が威信をかけた万里の長城以来の大構築物、三峡ダム。水没予定区域の建物の取壊しや住民の移転と生活激変を余儀なくされた町に山西省からやって来た2人の男女。炭鉱労働者のハン・サンミンは別れて16年経つ妻子を探しに、シェン・ホングは音信不通の夫に会いに…。この2人の物語を軸に変わりゆく町と人々の様子をドキュメンタリー風に映し取っている。人海戦術で建物取壊しする人夫たち、立ち退きに途方に暮れる住民、普及中の携帯電話の発着音、働き場所がなく売春商売する女たち、そんな状況に戸惑いながら2人は相手を探し求めてアチコチ彷徨う。杜甫、李白も愛した古代悠久な長江のほとり、開発進むイルミネーション、崩れ落ちる廃墟ビル、飛び立つ異形建物ロケット⁈、揺らぐヘッドライトとあまりモノ言わぬ旅人2人の周辺風景から心情を汲み取る。三千元で買った妻に逃げられ、親族のために作った新たな三万元の借金をこれから返してでも妻子に戻って欲しいサンミンの理由は一切説明がない、片やホングは新しい男との生活に入るための清算の旅路、過去の思い出に帰る人と新しい未来に飛び立つ人…。無辺の広大な中国にはドラマ題材が至る所に転がっている事を実感。開発15年経った今の洪水危機に瀕した三峡ダム周辺でもまた新しいドラマが十分出来そうです。