真田ピロシキ

花とアリスの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

花とアリス(2004年製作の映画)
4.0
Netflixでアニメのやつが配信されてて見る前に基の映画を見返しておきたいと思っていたところに蒼井優の結婚発表を聞き見るなら今でしょとレンタル。もう15年も前の映画になりましたか。かなり忘れている。

まず花とアリスのキャラクターが全然記憶と違っていた。蒼井優演じるアリスの方が引っ込み思案と思っていたのだが実際は逆で鈴木杏が演じた花が引いたどちらかというと目立たないタイプ。これは恐らく鈴木杏が漫画的な美少女タイプの人だったことに起因する錯誤で蒼井優を薄く見ていた。今見るとそこかしこで輝いていて街中でスカウトされるのにも納得。彼氏連れの母親と会った時の気まずさやつまんないことしか聞かれないけど会うのは楽しいらしい離婚した父親との会話などに見られる微妙な演技。「ウォーアイニー」は覚えていて1度目2度目と来ての絶妙さが染み込む。スカウトやオーディション審査員には彼女を見出した岩井俊二自身の投影があるかもしれない。

もう一つ勘違いしてたのは花とアリスの友情について。三角関係になる事は忘れていなかったのでもっとギスギスしたうわべのトモダチなのかと思っていた。本当のところはアドリブで嫌な元カノ役を受けてくれるくらいに親しい。それでもお互いの現状全てを把握してる程にベタベタはしない距離を保っている。今だとLINEの繋がりを求められたりするのでしょうか。その時代でなければ描けない関係性があるものと感じた。

そうした旬の役者の現在を用いて描いたのはアイドル映画と言える。これは褒めてます。とても良いアイドル映画です。岩井俊二では『四月物語』もアイドル映画でしたが、あっちが短いために良くも悪くも空想的に留まっていたのに対して本作ではホントウがせめぎ合う。今カノや元カノはウソ。喧嘩してるのもウソだけどホントウを孕んでいて儚く危うい。その淡さを縁取る岩井カラー、岩井レインに岩井ウインド。ウソを更に面白くしているのはスカウトされたアリスが当初はまるで演技が出来ていなかったのに現実では様々な面で巧みな演技してること。そして映画の舞台となるのが極めて現実世界に即していながら有名漫画家の名前を引用した架空の街という設定。フィクションの妙が炸裂する。学園祭で別れ話を持ち出した時に背景で揺れてるアトム。あの演出が生きるのはリアリティを含んだ実写映画ならではかと思う。

本作のウソは加減を間違えると悲惨な事になっているタイプで、これが10歳足して宮本先輩視点に立ってたらサスペンスホラーになっている。それと女子高生搾取にはならないようしているのが気分良く鑑賞させてもらえた点で瑞々しさを感じ取るのも一面的な見方に過ぎないかもしれませんがJKという嫌な言葉にあるようないやらしさは感じない。広末に「パンチラで決めたの?」とからかわれたオーディションのバレエが笑い話で済むのが品の表れ。あの蒼井優は本当絵になっています。