チッコーネ

妖婆のチッコーネのレビュー・感想・評価

妖婆(1976年製作の映画)
3.5
コメディ要素が一切なく、ひたすら陰湿に、重くのしかかってくるホラーなのがすごい。

ベティ・ディヴィスらハリウッドの大女優たちは、老境に差し掛かるとホラー映画に活路を見出したが、本作の京マチ子も吹き替えなしの裸体を晒すなど、覚悟としては充分すぎるほど。
御歳52歳で振り袖を着て、娘役を演じるのには無理があり(『西鶴一代女』における田中絹代を彷彿とさせた)、むしろ終盤の変わり果てた姿のほうが「白髪の妖婆にしては美しい」と思わせる。
付け歯まで装着しているのに…。

しかし稲野和子のイヤな女ぶりが際立っていて、京マチ子だけでなく特殊効果すら霞んでいた。
本作がもたらす不快感の源は、すべて彼女にある。
その自己中心的で嫉妬深い性格をあぶり出す演出は、欧州映画並の執拗さ。
『砂の上の植物群』で彼女を観て「なんてうまいんだろう」と思ったけど、本作で器用に唾棄すべき女を演じたため、却って女優としてのイメージに傷がついたのでは、と心配になった。