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みじかくも美しく燃えのsatchanのネタバレレビュー・内容・結末

みじかくも美しく燃え(1967年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

スウェーデンの脱走兵、シクステン・スパーレ中尉とサーカスから逃げてきた美女、ヘドヴィグ・イェンセンの駆け落ち物語。「1889年デンマークの森で心中した」というテロップが冒頭に出るので、エンディングを先に知ってしまう感じ。今どきの映画だと、このテロップはラストだよな〜と思いました。

2人がどういった経緯で森に逃げて来たのかは分かりません。駆け落ち後のストーリーです。人目を避けて生活する様子が描かれています。軍服からボタンや飾りを取り除き、カカシからボタンを盗み、ジャケットとして活用するところが印象的です。サーカスの一団の中でヘドヴィグには、エルヴィラ・マディガンという芸名があるようです。新聞に失踪したことが掲載されています。なのに、宿の洗濯ロープを持ち出して、森の中で綱渡りをして楽しんだりするから、宿屋の女将さんに素性を知られてしまうのでした。2人は身元を隠すために、宿屋を変えて転々とします。

2人は森の中の草原で愛し合ったり、ピクニックを楽しんだり、始終、綺麗な映像とモーツァルトの音楽が続きます。モーツァルトのピアノ協奏曲第21番は、欧米では「エルヴィラ」の別名で知られているそうです。それほど2人に起こった出来事はセンセーショナルだったのでしょうね。愛に言葉は必要ないのか、セリフも少なめ。蝶を捕まえようとしたり、てんとう虫を鼻につけたり。愛があれば虫取り遊びもデートに昇華してしまい、羨ましい限りです。

シクステンは名家の伯爵で、始めはお金もたくさん持っていますが、日に日に底をつくのは目に見えて分かります。脱走兵なので、身元が分かれば投獄、働くことができません。なのに、何故、贅沢にもホテルに泊まるのか、ワインを飲むのか、節約する術を知らないんだなぁと思いました。ヘドヴィグの方が生活力がある印象を受けました。持ち物を質屋に出したり、踊ってお金を得ようとしたり。知り合いの楽隊の演奏会に招待された時は、滞在先のカーテンでドレスを、鏡の縁飾りでティアラを作り、テーブルクロスをケープにして、出掛けていくわけですから賢い!

2人で釣りをしてニジマスを獲るシーンがありましたが、その無人島生活魂さえあれば、まだ生きていられたのに…そう思わずにはいられません。キノコや木苺以外にも、まだやればできるでしょ!何も死ななくてもいいのに…。2人の愛が美しいから、せっかく結ばれたのに残念でなりません。でも、自殺未遂を図ったシクステンの奥さんとか、外野の様子は度外視した形のストーリーなので、美しい映画に収まっているだけかもしれません。
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