はまさん

ダークナイトのはまさんのレビュー・感想・評価

ダークナイト(2008年製作の映画)
4.0
真の狂気の意味と、それに対峙する人間の心の葛藤が繊細に描き込まれた映画(=゚ω゚)ノ

人の心の中には誰しも、善悪を超越した次元で「狂気」とそれを抑えねじ伏せる事が出来る「理性」が存在する。

日常生活においては人は平穏を求める事が常となっているから、「狂気」が顔を出す事は殆どないと言える。

ただし一旦その「狂気」が頭をもたげると、自分では抑止の効かない種類の人間も少なからず存在する事も、昨今の報道を見れば明らかに思える。

この物語の「狂気」を代表する存在はもちろんジョーカーなのだが、彼は終始一貫して「理性」の存在を匂わせない。

ある意味「狂気」そのものの権現として登場するが、実はそれに対峙するブルース ウェインにも「狂気」は静かに確実に浸透して行く。

正義の名の下に自らの肉体を極限まで酷使し、闘いの中に身を窶していくうちに、闘いそのものが彼の心を蝕んでゆく様が赤裸々に描かれている。

その危険な兆候、「狂気」に気付いて身を挺して諌めるアルフレッドこそが、我々が真に求めている「良心」であり「理性」であり「正義」である事に、最後の最後で、観ている我々も気付く。

アメコミのヒーローのカタチを借りて、この社会の闇を描き出したクリストファー ノーランの手腕と、彼のリクエストに存分に応えた演技を見せてくれた出演者、特に真の狂気を我々に植え付ける怪演を見せてくれたヒース レジャーに心から賛辞を送ると共に、冥福を改めて祈りたい。
はまさん

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