えむ

つみきのいえのえむのレビュー・感想・評価

つみきのいえ(2008年製作の映画)
4.0
12分と短いアニメです。

水に沈みつつある街。
徐々に水位が上がる中、水中に沈み使えなくなった部屋の上にレンガで新たに部屋をつくりそこに移り住んでいく、まさに『つみきのいえ』。

そこにひとり暮らす老人が、ある日大切なパイプを水中に落としてしまう。
それを探すために、初めてスーツとボンベを手に入れて、ひとつずつ下の階へと降りていく…

降りるほどに、そこに住んでいた頃の記憶が蘇り、自分の生きてきた歴史を過去を紐解いていくような内容になってる。

アマプラ版は、音楽のみの無性の静かなアニメになっているけれど、変にナレーション聞いたりしなくて良い方が、これは情緒があるかもしれない。

静かなぶん、そこでどう感じたのだろうかと考え、最後また自分の部屋に戻ったときには、彼の胸にあったのは、ただ郷愁の念なのか、寂しさなのか、あるいは過去への感謝なのか、ちょっぴりの後悔の念なのか、今もここにいることへの喜びなのか虚しさなのか…

既に家族も街の人もおらず、この老人の背景も多くは語られることがないけれど、この空白に、想いを馳せる想像の余地が広がっている。
だからこそ不思議に胸に残る。

静かで短いけれど、味わい深い作品。
えむ

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