竜平

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドの竜平のレビュー・感想・評価

3.5
1900年代初頭、油田を掘り当て一攫千金を狙う男「ダニエル・プレインヴュー」の姿を描く。ポール・トーマス・アンダーソンによるスリラー的ヒューマンドラマ。

上映時間が長めのイメージのあるP・T・アンダーソン作品。今作は静かにじっくりと、ちょっぴりシリアスにも描いていく作風、とこれは後の彼の作品『ザ・マスター』にも通じてる気がする。主人公プレインヴューを演じるのがダニエル・デイ=ルイス。とある土地の情報に始まり、貪欲なまでにその地に眠る石油を求めて動き回っていく。油田の掘削作業というのは常に事故や危険とも隣り合わせで、序盤からちょくちょく見えるアクシデントの描写と流れる不穏な音楽が今作に於いての不安感を醸し出していく。中盤の大規模な火災シーンなんかはすごい迫力。やがて息子とのこと、とある人物の登場などを経て徐々に歯車が狂っていくというか、野望の深みに嵌っていくというか。一直線ながら、天性の何かを持っているとかではきっとなくて、自身の目的に半ば取り憑かれてるからこその「強さ」を持ってる、というような印象。で翻弄され、自分の信念に葛藤したり苦悩したりの姿もしばしば。そこにあるのは狂人の孤独感、やがて待ち受けるものは悲劇とも言えるかも。

「信仰心」的な話と絡めてくるあたりで共感とは違う部分が出てきたりして、これは個人的に苦手というかピンとこないとこではある。ポール・ダノ演じる宣教師の若者イーライがそこらへんまた掻き回してくる。てかダノは何気に一人二役やってるんだけど双子の設定で容姿もほぼそのまんまで、しかも劇中あんま説明もないから序盤めちゃくちゃこんがらがったってゆー、これ俺だけなんかな。まぁそこは置いとくとして。主人公が無神論者で、その中でも感じる罪やら、あと見るからに胡散臭いものには懐疑的な様とかは見ている俺もまぁ同じような目線を持てたけども、ただ作品として結局何が言いたかったのかちょっと見えてこなかったというところ。「我が道を行け」的なことか、「正しく信じる者は救われる」的なことなのか。ストーリーでなくメッセージがむずい、という感じ。他の人の解説やら考察やらを読んでやっと諸々理解できたつもりだけど、とりあえずそれらを読む前の点数を付けとくとする。
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