さふらん

ベルリン・天使の詩のさふらんのネタバレレビュー・内容・結末

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 き、きれ〜……。天使って図書館に集まるんだ。それで天使同士は目が合うとにこっと微笑むんだ。劇中に散らばる言葉のなんて詩的な美しさ。天使の視界はモノクロームで、人々の思考が囁きの流水となって流れ込む。優しい調べは外界の俗っぽいスパンコール、ネオンライト、シャンデリアの眩しい輝きを拾わないで、密やかに満ちている。
 ヘリコプターで撮ってる?(エンドロールにヘリコプターの文字が見えた気がした)不思議な、浮遊するようなカメラワークが愉しい。
 自動車事故で死にかけの男に天使が楽しげな言葉を次々に吹き込むのが泣きたいほどに柔らかい。自殺を止められなかったカシエルの心痛な絶叫、その後、世の悲劇や寂しげな場所を集めたらしいショットの集合体がカシエルを風のように攫っていく。天使が人間に寄り添うときの、あのなんとも言えぬ悲しさ、嬉しさ。
 人間になった天使へ、ブランコ乗りが紡ぐ詩のような、恋文のようなセリフの鮮烈な響きよ。あんな言葉を面と向かって言われたら、あまりのロマンチシズムと果ての現実主義に共倒れになってしまいそう。ーー今までは偶然だった。駅のホームの緑の目をした子供が私の弟でないことも偶然。恋人に行きずりの男を選ばなかったのも偶然。今こそが必然だと。いつか一度は真剣になる。偶然は、もうお終い……ハントケって、天使の詩を書くの……
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